最高にファビュラスな海洋生物たち「ファブ・ファイブ」とは?...5種類の「海のアイドル」に未来は託された

Selling the“Fab Five”

2025年3月26日(水)13時54分
デービッド・シフマン(海洋生態学研究者)

南オーストラリアの海洋保護キャンペーンに起用された5種の生物:ホホジロザメ、シロハラウミワシ、ミナミセミクジラ、オーストラリアコウイカ、オーストラリアアシカ

南オーストラリアの海洋保護キャンペーンに起用された5種の生物(左から時計回りに)ホホジロザメ、シロハラウミワシ、ミナミセミクジラ、オーストラリアコウイカ、オーストラリアアシカ ALASTAIR POLLOCK PHOTOGRAPHY/GETTY IMAGES, UWPHOTOG/GETTY IMAGES, DAVE WATTSーGAMMA-RAPHO/GETTY IMAGES, ALEXIS FIORAMONTI/GETTY IMAGES, AFLO

適切に設計され、適切に維持されたMPAでは、そうでない海域よりも魚が大きく育ち、数と種類も増える。乱獲で減少した種も回復する。回復した種はMPAの外にも泳いでいくから、波及効果で生息域も広がる。

だがMPA指定の目的が誤解されたり、進め方が強引だったりすると、沿岸部の漁業従事者が禁漁区の設定などに抵抗する場合がある。それでMPA指定が撤回されたり、せっかく指定してもルールが守られなかったりする。

そうした事態を防ぐため、ウートンらは南オーストラリアで斬新なアプローチを試みた。

まず最高にファビュラス(驚異的)な生物5種を選び、それを「ファブ・ファイブ(Fab Five、驚異の5種)」と名付け、バーチャル・リアリティー(仮想現実)やビジュアルなツールを駆使して彼らの魅力をアピールし、広く地域住民の理解と参加を得る手法だ(その成果は2024年3月に学術誌バイオロジカル・コンサベーションで報告されている)。

全員の賛同を得るために

環境保護の必要性を納得してもらうのは、複雑かつ困難な仕事だ。無味乾燥な科学的データを並べるだけではうまくいかない。MPAの成功にも、住民の支持と理解を得ることは不可欠だ。

「漁業や観光など、地元の人は海を資源と見なし、その資源を生活の糧としている。そういう人の賛同なしにMPAを設けても経済的損失が問題になるだけだ。しかしMPAに指定する過程で地域の人と触れ合えば、懸念を払拭し経済的な悪影響も回避できる」とウートンは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正米雇用創出、91万人下方修正 3月までの1年間

ワールド

オラクル、クラウド部門の通期売上高見通し引き上げ 

ワールド

カタール首相、ガザ巡る仲介役継続表明 イスラエルの

ビジネス

米シティ、今期投資銀手数料と市場関連収入は1桁台半
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒否した母親、医師の予想を超えた出産を語る
  • 3
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題」』に書かれている実態
  • 4
    富裕層のトランプ離れが加速──関税政策で支持率が最…
  • 5
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 6
    ドイツAfD候補者6人が急死...州選挙直前の相次ぐ死に…
  • 7
    もはやアメリカは「内戦」状態...トランプ政権とデモ…
  • 8
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 9
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 10
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中