韓国の政治は、なぜ「大混乱」を繰り返すのか...大統領の「帝王的」権力が変わらない理由

KOREA’S IMPERIAL PRESIDENCY

2025年3月20日(木)16時57分
イ・ユンウ(ジャーナリスト)

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尹の最終弁論を控え、憲法裁判所前で会見を行う野党「共に民主党」の議員ら LEE SANG-HOONーMATRIX IMAGESーREUTERS

要するに、全てが大統領とつながっているのだ。このため韓国では、三権の分立や独立といった制度的枠組みの外で政策が構築されている。大臣たちは省庁の名目的なトップにすぎず、政策立案者らは大統領府の賛同を得るために、大統領の言外の意向をくんだ政策をつくる(これは大統領の追加的な権力と言える)。

当然ながら、与党政治家が耳を傾けるのも、有権者や国民全般の声ではなく、大統領の言葉だ。


立法府でも、大統領には強大な権限がある。なにしろ大統領が拒否権を行使すれば、たいていの法案は廃案にできるのだ。拒否権を覆すためには国会の3分の2の票が必要で、実現したことはほとんどない。

24年12月の非常戒厳宣布は、その解除を要求する決議案が国会で可決されたが、このような措置を取れるのは、あくまで宣言が出された後のこと。大統領は事前に誰にも相談しなくていいから、発令そのものを阻止することはできない。

この2年半、尹の統治下で韓国の人々は帝王的大統領制の本質とその危険性を目の当たりにしてきた。行政府と軍は尹のイエスマンで固められ、何の権限も持たない尹の取り巻きが政策に口を出し、報道の自由は大幅に制限された。

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