韓国の政治は、なぜ「大混乱」を繰り返すのか...大統領の「帝王的」権力が変わらない理由

KOREA’S IMPERIAL PRESIDENCY

2025年3月20日(木)16時57分
イ・ユンウ(ジャーナリスト)

newsweekjp20250319031943-3c9aa5b9c6a81dd272f2b7738826e788b716164a.jpg

釈放された尹を拘置所前で出迎える支持者ら KIM HONG-JIーREUTERS

なにより、尹は立法府(国会)を頭から軽視し、政治的な反対意見を個人攻撃と見なした。元検事総長である尹は、検察庁を味方に付けて裏から手を回し、政治的ライバルや自分を批判する者に嫌がらせをし、自らの不祥事や大統領としての無能さに司法のメスが入らないようにした。

だが、失敗に終わった尹の自作自演クーデターは、シュレジンガーが言う「大統領の権力は、伝統的な政治形態を覆すほど幅広く専断的であるという考え方」を、全く新しいレベルに引き上げた。韓国の人民は、大統領が一夜にして民主主義を転覆できることを知ったのだ。


軍事独裁時代の残念な遺産

長く続いた軍事独裁時代の名残で、韓国の憲法や法令は、大統領に過大な権力を与えている。大統領は1万人近くの政府職員の任用についても最終決定権を持つ。大統領が任命した後に国会の承認が必要なポストは、首相と監査院長だけだ。これに対してアメリカでは、上院の承認が必要なポストは1300に上る。

韓国の大統領は、検察、警察、情報機関、そして税務当局を事実上支配しており、それが不公平な取り締まりや恣意的な法執行を可能にしている。大統領は、計4700億ドル以上の予算案を国会に提出する権限もある。国立大学や放送通信委員会や貿易機関などのトップの任命権もあり、市民生活の深い部分まで大統領の権力が及ぶ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中