得票率は前回比で倍増、約21%に...極右政党AfDとドイツ政治の危うい行方

No Longer on the Margins

2025年3月6日(木)10時27分
ポール・ホッケノス(ベルリン在住ジャーナリスト)

また旧東ドイツで暮らしていた人には、移民やイスラム教徒などの異文化や、非ドイツ系住民と接する機会がほとんどなかった。1990年代に旧東ドイツに流入した非白人の移民は、しばしば露骨な暴力に直面した。

こうしたなかで極右のネオナチ運動が広がり、一部の地方では議会を支配するまでになった。大学に行かず、田舎暮らしで40歳以上の男たちが、こぞってAfDを支持した。


ボーフム大学の歴史学者ダニエラ・リューターは筆者に、「AfDは最初から男性中心の政党だった」と述べ、こう続けた。

「ドイツの歴史における民族主義運動の常として、AfDも男性優位の伝統的な家族構造を地域社会の中心に据えている。彼らのジェンダー政策の一部はナチスの政策そのものだ」

今でこそ「党の顔」はレズビアン女性のアリス・ワイデルだが、仮にもAfDが政権を握れば、もうそこに彼女の居場所はないだろうとリューターは言う。

やがてAfDは東部各州の議会に進出し、新自由主義の看板をかなぐり捨てて極右の頑迷な保守政党へと変貌した。移民やイスラム教徒を忌み嫌い、気候変動を否定し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に親近感を抱き、ユダヤ人を嫌い、ナチスの時代を懐かしむようになった。

それでも彼らが選挙で躍進できたのは、15年のシリア難民危機のおかげだ。16年と17年の地方選挙で、彼らは初めて旧西ドイツ側の州議会でも議席を獲得。旧東ドイツ側では、複数の州で20%超の票を獲得した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年

ワールド

ハセット氏、FRBの独立性強調 「大統領に近い」批

ビジネス

米企業在庫9月は0.2%増、予想を小幅上回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中