DOGEの天下...「皇帝」マスクが6兆ドル決済システムを牛耳り、米政府をぶった切る

MUSK’S POWER GRAB

2025年2月28日(金)16時47分
ダーリア・リスウィック(司法ジャーナリスト)、マーク・ジョセフ・スターン(スレート誌司法担当)

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大統領執務室で政府職員削減の大統領令署名に立ち会いその意義を強調するマスク(2月11日) KEVIN LAMARQUEーREUTERS

マスクは立憲民主制の原則を否定し、三権分立ではなく全権掌握の独裁体制を目指している。行政府を縛る立法府や司法府の権限は無視。いかなる法令や判例も単なる参考意見であり、その採否を決めるのは自分だと信じ切っているようだ。

国家の指導者が法を無視して自らに権限を集中させる行為を自己クーデターと呼ぶ。勝手に行政権を拡大し、立法権も司法権も手中に収める。そんな暴挙を、私たちは目の当たりにしている。

怠け者の大統領が、責任能力を欠く熱血漢の友人に権限を代行させている今の事態を、私たちは何と呼べばいいのか。ダブルの自己クーデターか、それとも無法な権力奪取か?


いや、レッテルはどうでもいい。大事なのは眼前で繰り広げられている現実だ。民主主義の諸制度が意図的に解体され、憲法は無視、責任の所在は不明なまま、行政の権限と個人の支配が無制限に拡大されている。

第2次トランプ政権の発足以来、マスクの行動はあまりにも極端で、かいつまんで説明しようとすれば、ひどく大げさに騒ぎ立てる感じになりかねない。だが、これは誇張でも脚色でもない。事実はこうだ。

あの大金持ちは行政権の行使を口にしているが、彼に公的な地位はなく、あるのは意味不明な「特別政府職員」という肩書のみ。彼の率いる「政府効率化省(DOGE)」の実行部隊は、政府機関を内側から破壊することだけを目的としている。

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