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荒川河畔の「原住民」(19)

「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、本当にホームレスになった

2025年1月24日(金)06時30分
文・写真:趙海成

アルミ缶収集で生きる現在の生活

今の征一郎さんは、荒川河川敷の他のホームレスたちと同じように、アルミ缶を拾って生計を立てている。

だが数年が経っても、長い間助けてくれたパン女のことを忘れてはいない。彼は挫折して絶望するたびに、「世の中には良い人もいて、自分はあの女性に助けられた。彼女の期待を裏切ることなく、強く生きなければならない」と自分を励ましている。

他のホームレスは明け方にアルミ缶を集めに出かけることが多いが、征一郎さんは毎晩11時ごろに「出動」する。多くのサラリーマンが朝夕の通勤時に飲み物を買うため、住宅街近くのゴミ箱には多くのアルミ缶が置かれていて、取りにくる人を待っているようなのだという。

本人曰く、征一郎さんは荒川一帯の「アルミ缶作業者」の中で最も収入が少ない。1回の収入は通常2000円前後で、週に3回しかアルミ缶を売りに行かない。

もし体調を崩したら、仕事をやめて何日も寝続けなければならない。彼は約10年前から病院に行ったことはなく、気分が悪くなると薬局で買った風邪薬を飲んで、長時間寝て体力を回復しただけだという。

荒川河川敷のホームレス

今の征一郎さんはアルミ缶を拾って生計を立てている(左)/公園の蛇口は征一郎さんが水を飲み、シャワーを浴びる場所(右)

無一文になり、餓死を試みたが...

仕事をしなければ、もちろん収入もない。一日に1袋50円のインスタントラーメンしか食べない日も珍しくない。征一郎さんにとって、ご飯は食べなくても耐えられるが、コーヒーは飲まなければならないし、タバコも吸わなければならない。彼が稼いだ決して多くはないお金は、ほとんどこの2つに費やされている。

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