最新記事
韓国

新たな分断に直面する韓国 戒厳令から1カ月、大統領官邸前で対峙する二つの民意

2025年1月10日(金)19時20分
佐々木和義

2011年の朴槿恵大統領弾劾を求める光化門広場での集会

2011年の朴槿恵大統領弾劾を求める光化門広場での集会(筆者撮影)

集会参加者たちが8車線道路を塞ぐ

光化門広場は2022年まで大統領執務室や官邸があった青瓦台に近い広場で、反政府デモの主会場だった。8年前、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を求めるろうそく集会も光化門広場で行われた。

一方、尹大統領は就任に際して執務室を龍山区の国防部庁舎に移転、官邸も龍山区漢南洞の外交部長官公館に移した。官邸入口がある道路は漢江の北岸である江北と南岸の江南を結ぶ交通の要所だが、官邸入口を境に北側は大統領派、南側は反大統領派が集会を開いており、参加者たちが8車線道路を塞ぐ形になったため、警察は2つの集会の間に機動隊を配置して警備にあたっている。

大雪警報が発令された1月5日、警察の非公式推計によるとイタリア大使館前で行われた大統領の退陣要求集会は1万人、スペイン大使館やラトビア大使館への進入路を塞いだ大統領擁護デモには6000人が参加したという。

変化したろうそく集会

世界的に注目された今回の戒厳令宣布と国会での大統領弾劾決議だが、一方でろうそく集会は観光業を直撃している。釜山市と釜山観光公社によると旅行キャンセルや問い合わせが相次いでおり、ホテルや観光施設などの1〜3月の予約が前年同期比で65パーセント落ち込んだという。8年前の朴大統領退陣要求デモはソウルで行われたこともあり、地方への影響は小さかったが、今回は韓国各地に飛び火しているのだ。

8年前のろうそく集会は光化門広場、親朴派集会は光化門広場から500メール離れたソウル市庁前広場で行われた。そのときも警察は対立する2つの集会場の間に機動隊を配備した。会場は緊迫した雰囲気で取材カメラを向けた際、怒号を浴びせられるなど恐怖を感じるほどだった。

一方、今回は落ち着いており、恐怖を感じる場面はない。8年前の反朴集会会場と親朴集会会場は、最寄り駅はもとより地下鉄路線も異なっていたが、今回は官邸前での集会とあっていずれも地下鉄6号線漢江鎮駅が最寄りで両派が接触するが、大きな衝突等は起きていない。退陣要求集会参加者から会場を尋ねられた大統領派集会参加者が、懇切丁寧に教える場面もあったほどだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「米国の和平案推し進める用意」、 欧

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中