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平和構築

「苦しみは比べられない」シリアから逃れてきた若者に日本の同世代はどう見えているのか?

2025年1月10日(金)11時30分
※JICAトピックスより転載

NPO法人サンカクシャの早川智大さん(以下、早川) 当時の住まいはどうしていたのですか。

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早川 智大(はやかわ・ともひろ) NPO法人サンカクシャ居場所事業マネージャー。大学卒業後、人材紹介会社を経て現職。若者を対象とした相談拠点の管理運営のほか、居場所づくりに取り組む

アナス 最初の3か月は貨物用のコンテナに住んでいました。その後は13人のシリア人とアパートの3部屋で共同生活をしました。レバノンでの生活はかなり大変でしたが、ずっと大学の修士課程に進学したいと考えていました。しかし、会社が全く許してくれず、「それならクビだ」と言われました。

世良 その後、どうして日本にいらっしゃったんですか。

アナス 大学の修士課程に進めばもっといい仕事が見つかると思っていたところ、JICAのJISRプログラムを知り、応募しました。

大井 JISRはJICAが実施しているシリア難民向けの人材育成事業(シリア平和への架け橋・人材育成プログラム)です。JICAは2017年から約80人のシリア人の若者を留学生として日本に受け入れてきました。

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写真中央:大井 綾子(おおい・あやこ) JICA平和構築室室長。UNDP東ティモール事務所で国内避難民の帰還支援などを経てJICA入構。南スーダン事務所、アフガニスタン事務所次長などを務め、2024年1月より現職
写真右:伊藤 綱貴(いとう・つなき) JICA広報部。2014年JICA入構。本企画の進行役を務める

世界で難民が増え続ける理由とは?

世良 世界にはどのぐらいの難民がいるのですか。

大井 紛争などが理由で国境を越えて難民となる人、国内で避難する人を合わせて1億2000万人超と言われています。世界で67人に1人が避難していることになります。アナスさんはシリアを出られてから何年ですか。

アナス 12年です。

大井 10年、20年、30年、そして避難先で子どもが生まれて2世代、3世代となる難民もいます。シリアからの難民が最も多く、ベネズエラ、ウクライナ、アフガニスタン、パレスチナといった国が続きます。この10年ほどで、難民の数はどんどん増えています。

伊藤 増えている原因は。

大井 現在もたくさんの紛争が起きていて、増え続ける難民の数に対して、紛争が解決して故郷に帰ることができる人の数は圧倒的に少ない状況です。2023年、世界の紛争の数は59件に上りました。また、難民の受け入れ国は約7割が低中所得国。もともと経済的に豊かではなかった国に大勢の難民が入ってきて、住民との間に軋轢が生まれることがあります。JICAでは難民の支援はもちろん、受け入れ国の負担軽減、もともと住んでいた住民の生活改善にも力を入れています。例えば、アフリカで最も多くの難民を受け入れているウガンダでは、難民と住民の両方に米作りの研修を行ってきました。

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