最新記事
フランス

フランス政変の行方――盟友バイルー新首相が導くマクロン政権の終焉の始まり

2024年12月19日(木)12時08分
山田文比古(名古屋外国語大学名誉教授)

バイルー新首相は、マクロン支持の与党中道連合を中核にして、左派の穏健派から右派の穏健派までを含めた、幅広い与党連合の連立政権を目指すと見られている。

しかし、政治的に鋭く対立する左派と右派を含めた組閣には困難が予想され、仮になんとか連立政権が成立したとしても、実際の政権運営や政策調整は、連立各党の妥協に頼るしかなく、政策面でも連立各党が最低限合意できる範囲でしか決定・実行できないのは目に見えている。

このようにそもそも政治的主導権を奪われているマクロン=バイルー政権は、当初からレームダック状態でスタートすると言わざるを得ない。

大統領としての指導力を喪失、しぶしぶ任命

しかも、マクロン大統領は、先の議会解散と総選挙における敗北以来、すっかり大統領としての指導力を喪失しており、今回のバルニエ首相の後任選びにおいても、自らが望んだ股肱の臣を選任することができず、中道連合の重鎮、バイルー党首に押し切られる形で、同党首自身を新首相に任命せざるを得なかった。

バイルー党首は、マクロン大統領が初めて選出された2017年の大統領選挙において、自らの立候補を取り下げ、マクロン支持に回って、中道派をマクロン支持で一本化し、マクロン当選に大きく貢献した。

その時以来、マクロン政権下で常に自他ともに認める首相候補と見做されてきたが、マクロン大統領の選ぶところとはならず、法務大臣などの処遇ポストに甘んじてきた経緯がある。

今回の首相選びにおいても、政界やメディアでは早くから本命と目されていたが、マクロン大統領は最後まで、バイルー党首以外の選択肢を模索し続けた。

新首相決定の最終段階でも、マクロン大統領はバイルー党首に対し直接、改めて、同党首を首相に選任するつもりはないと伝え、失望した同党首が、それではこれまでの盟友関係をご破算にするとまで述べて、翻意を迫ったことでようやく、マクロン大統領も折れて、同党首を首相に選任することになったと報じられている。

結局、しぶしぶ任命した形になっているが、マクロンが最後までバイルーを忌避し続けたのは、なぜか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、エヌビディアが独禁法違反と指摘 調査継続

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中