最新記事
ウクライナ戦争

朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だった...解放されたアゾフ大隊兵が語る【捕虜生活の実態】

THE STORY OF KIRILL, A RUSSIAN PRISONER

2024年12月5日(木)14時21分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

親ロシア派メディアの動画に写った捕虜になった時のキリル

22年5月、親ロシア派メディアの動画に写った捕虜になった時のキリル

「聞いてはいけない質問だ」

筆者がキリルのことを知ったのは開戦の年、彼の妻に出会ったのがきっかけだった。2022年5月3日、ザポリッジャ州にある避難者受け入れ施設に世界中のメディアが集まった。ロシア軍に包囲されたマリウポリから避難できずにいた住民が脱出した、との知らせを受けてのことだ。

炎天下の夕刻、8台ほどのバスがやって来た。一番右のバスから幼い子供を抱いた女性が出てきた。マリウポリで教師をしていたアンナ・ザイツェバ(当時24)と生後6カ月の長男スビャトスラフだった。アンナの母ラリーサは砲撃によるけがで、腕に包帯を巻いていた。家族はたちまちカメラマンに囲まれた。避難者の多くが名前の公表を伏せるなか、家族は実名での取材に応じた。


「2カ月もの間、製鉄所の地下に避難していました。この子と一緒に」と話すアンナは65日間の避難生活で体重が10キロ減っていた。爆撃の振動で脳震盪になったこともあるという。

アンナの夫はどうしているのか、気になって尋ねてみた。すると、隣にいた女性記者が口を挟んだ。「それは聞いてはいけない質問だ」。どうやら彼女の夫はウクライナ軍の兵士で、今もマリウポリで戦っているらしい。そのことが知れわたると、母子は格好の拉致対象者としてロシアのスパイに狙われてしまうという。

何という過酷な運命だろうか。この家族の再会を見届けたい、そんな思いが湧き上がってきた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

不明兵捜索、時間との戦い イランの猛攻耐えた米軍救

ワールド

トランプ氏、イランに合意期限「6日」 米戦闘機乗員

ワールド

米、イランで不明の戦闘機乗員救出 トランプ氏「史上

ワールド

イラク南部の巨大油田に攻撃、3人負傷 イラン国境に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 3
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「攻撃的知能」を解剖する
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 7
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 8
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 9
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 8
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中