最新記事
米大統領選挙

米大統領選挙の「選挙人制度」は世界の笑い者── どうして始まりなぜ変えられないのか?

The Electoral College Makes the U.S. a Laughingstock

2024年11月6日(水)16時36分
ダン・ペリー
「勝利」を祝うトランプ夫妻

投票日翌日の未明、事実上の「勝利」を祝うトランプとメラニア夫人。今回は得票数でも勝利したが(11月6日、フロリダ州ウエストパームビーチ)REUTERS/Brian Snyder

<建国当時、人口の多い州と少ない州の不公平をなくすために作られた選挙人制度が、今では多くの国民の票を無効化し、意思をゆがめる有害なシステムになっている>

アメリカの大統領選挙における選挙人制度は、世界で他に類を見ない有害なシステムだ。有権者の意思を大きく歪め、おかしな結果をもたらし、国民の政治参加を抑制する。

アメリカは合理的な選挙を行うことができないようだと、物笑いの種にもなっている。私は外国特派員としておそらく100カ国の取材に携わってきたが、民主主義国家の中で、これほど異様なシステムを持つ国はないと断言できる。

そのため、ドナルド・トランプ前大統領はカマラ・ハリス副大統領より少ない得票数で5日の選挙に勝利する可能性さえある。しかもこのような事態は2000年と2016年に次いで3度目だ。

それは、子供でも知っているように、普通の人々が投票する「一般投票」にはアメリカでは何の意味もないせいだ。アメリカ以外の民主主義国すべてにおいて、一般投票は選挙のすべてに近い意味を持つというのに。

アメリカでは、一般人からの得票数より、各州に割り当てられた選挙人の数で優ったほうが勝つ「選挙人制度」を採用している。それも「勝者総取り方式」といって、各州の勝者がすべての選挙人を獲得する。

このため不満が広がっており、世論調査では約60%が大統領選挙を全国的な投票で決めることに賛成している。だが、ほとんどの国民は、そのような変革は不可能だとも考えている──まさに、とんでもなく非民主的な苦境に陥っているのだ。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中