最新記事
米大統領選

投票日まであと1週間...米大統領選「5つの争点」を徹底解説 独自調査で見えた「最大の争点」は?

SURVEY SAYS…

2024年10月30日(水)14時22分
ニューズウィーク米国版編集部

人工妊娠中絶

人工妊娠中絶について意見が対立する人たち

ILLUSTRATION BY BRITT SPENCER

専門家の分析や世論調査によれば、ハリスが選挙戦の争点の1つに掲げている人工妊娠中絶の権利は、ハリスと民主党に勝利を呼び込む一因になるかもしれない。

本誌の調査では、中絶問題に関しては有権者の半数以上に当たる53%が民主党の立場を支持。共和党への支持は36%だった。民主党を「強く支持する」人の割合は約33%で、昨年7月の28%から増加。共和党を「強く支持する」人は16%で、昨年7月の14%から微増にとどまる。


民主党寄りになった有権者の多くは女性だ。ハリスが大統領候補になるまで、女性の民主党支持率は51%だったが、直近の10月には55%まで増えた(ちなみに昨年7月時点では48%だった)。一方、共和党支持と答えた女性は32%で、ハリスの参戦後もほぼ変動がない。

世論調査を見る限り、中絶の権利を争点とするハリスの戦略はトランプとの接戦を制する上で有効そうだ。ミネソタ大学のポール・ゴーレン教授(政治学)によれば、ハリスのメッセージは「この夏の間に選挙への関心を高めた中絶権支持派の有権者に届いている」。

「こうした有権者が、ハリスは中絶権を支持していると知れば、当然のことながら民主党の主張は自分の意見に近いと考えるようになる。国民の過半数は、ほとんどあるいは全ての条件下で女性の中絶権を支持しているから、(この問題に関する)民主党の立場を『強く支持する』と答える人の割合が増えるのは当然だ。もともと女性ではハリス支持がトランプ支持を15%も上回っており、このジェンダー・ギャップも民主党への追い風になり得る」

フロリダ・アトランティック大学の非常勤教授クレイグ・アグラノフ(政治マーケティング)に言わせれば、中絶問題で民主党の支持率が上昇している背景には「ますます深刻化する政治的分断」がある。

「さまざまな州が中絶を制限する法律を導入するなか、中絶問題は多くの有権者にとって、政策への支持表明にとどまらず、もはや自身のアイデンティティーの問題になっている」

ブラウン大学のウェンディ・シラー教授(政治学)も、これだけの接戦だと中絶権の問題が勝敗を分ける可能性はあるとみる。

保守派で固めた連邦最高裁は22年に「ドブス対ジャクソン女性健康機構」訴訟の判決で、女性の中絶権を合衆国憲法上の権利と認定した半世紀前の「ロー対ウェード」判決を覆し、中絶を認める判断は各州に委ねるとした。

この件に関してハリスはトランプを糾弾し、自分が大統領になれば連邦レベルで中絶権を復活させる法案に署名すると公約している。

対するトランプは、保守派の判事を最高裁に送り込んで「ロー対ウェード」判決を覆させたのは自分の功績だとアピールしてきたが、この問題が共和党への逆風となってきたため、今は微妙に態度を変えている。

中絶禁止の判断は各州に委ねるとの主張は変わらないが、連邦レベルでの中絶禁止法案には拒否権を行使するとも語っている。

──ハレダ・ラーマン

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中