最新記事
朝鮮半島

韓国の拉致被害者家族、北への宣伝ビラ10万枚散布強行へ 緊張高まる非武装地帯近隣の住民は猛反発

2024年10月25日(金)18時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

散布するビラには日本人の横田めぐみさんの写真も

また「必ずしも風船でなくてもビラを送る方法は多い。北朝鮮が離散家族などの問題について対話し、韓国へゴミ風船を送る行為などを中断せよという趣旨だ」と話した。

散布予定のビラには拉致被害者の写真と説明文が書かれており、チェ代表の父親などの韓国人拉致被害者6名に加えて、日本人の拉致被害者、横田めぐみさんも掲載された。

チェ代表は「色々な状況などを考慮して来週中には公開散布をする。ビラには1ドル紙幣だけを入れる予定であり、USBなど他の物は入れない予定だ」と話した。

また、北朝鮮へのビラ散布が南北関係にかえって緊張感を与えるという指摘に対しては、「北朝鮮に拉致被害者や離散家族の再会などの対話を要求し、韓国に向けての宣伝放送やごみ風船散布を止めるよう要求するのが先だ」とし、「私たちにだけしきりに中断しろと言うのは本末転倒だ」と反論した。

そして、宣伝ビラ配布について「具体的な公開散布時間と場所はまもなく公示する」と話した。

非武装地帯に接する住民の苦しみ

newsweekjp20241025091314-32987397bb021712386dbf2c84478a7ea85aa248.jpg

軍事境界線の観光ツアー申込者にツアー当日に届いたという中止の案内メール JTBC News / YouTube

今回、拉致被害者家族の団体が宣伝ビラの散布を行うと発表した坡州市は韓国北西部に位置し、非武装地帯を隔てて北朝鮮と向き合っている。そのため、南北関係の緊張が高まると住民たちはその影響を受けざるを得ない。実際、北朝鮮からのゴミ風船が飛んでくるほか、9月下旬からは北朝鮮が拡声器で動物の鳴き声や金属を引っ掻くような騒音を爆音で流しだし、生活に大きな支障を及ぼしているという。

住民の高齢者は「睡眠薬と鎮静剤を飲んでも無駄だ。耳栓をすると耳がただれて炎症が起きた。政府関係者はここに来て一晩だけでも過ごしてみるべきだ。とても苦しい。どうか助けてほしい」と涙を流した。また別の住民は「以前の拡声器放送は人の声だったが、今度のは騒音で拷問し、精神病になりかねないほどだ」と訴えた。

さらに、北朝鮮からの軍事行動に備えるため韓国軍の警備も強化されたため、大通りには装甲車が配置され、農作業をしていても兵士から追い出されることもあるという。また、平時であれば政府の許可を得た観光客のツアーも行われていたが、それらも突然中止になってしまい、宿泊業者も含めて、地域経済に影を与えつつある。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中