最新記事
女性

イラン大統領選にも女性候補が...CEOから宇宙旅行者まで「イラン女性の社会進出」を見くびるな

2024年7月17日(水)15時36分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
ゾーレ・エラヒアン

ゾーレ・エラヒアン(写真)ら4人の女性が大統領選に立候補していた(6月の記者会見、テヘラン) MORTEZA NIKOUBAZLーNURPHOTO/GETTY IMAGES

<イランの女性は識字率が低く、社会的な地位も低い...そんなイメージを覆す、ビジネスにも政治にも挑戦する「強い女性たち」>

「まだまだ日本人が知らない 世界のニュース50」イブラヒム・ライシ大統領の事故死に伴い6月28日に投票が行われたイラン大統領選では、当初80人が立候補を届け出たものの、認められたのはわずか6人。改革派や穏健派の有力候補が次々と失格した。だがその中に、4人の女性候補がいたことはあまり知られていない。

イランの女性は識字率が低く、社会的に低い地位にとどまっている──世界ではそんなイメージを持たれているかもしれないが、実態は程遠い。一部の貧しい地区を除いて女性の識字率は高く、社会進出も進んでいる。


2022年の大規模なデモが記憶に新しい。髪を覆うヒジャブの着用強制が発端となり、女性たちは自由を求めて立ち上がった。

逆境に負けず、圧政にも立ち向かうイラン人女性の強さは、教育によるところが大きい。彼女たちは強い自信と野心を持ち、目的意識も十分だ。そして、無関心な人々も巻き込んで行動へと駆り立てる力を備えている。

その先頭を走る1人が、起業家で宇宙飛行士のアニューシャ・アンサリだ。米テクノロジー企業プロデア・システムズの創業者・CEOで莫大な富を保有する資産家であり、実力のある若き女性実業家として知られる。民間女性で世界初の宇宙旅行にも成功している。

工学者で起業家のセイデ・ファテメ・モギミもジャンルを超えた強靭な活躍を見せる。

エンジニアでありながら、建設党に所属する政治活動家。イラン最大の貨物運送会社の1つであるサディド・バー・インターナショナル・シッピング・アンド・トランスポーテーションの創業者・CEOでもあり、この分野のビジネスに参入した最初のイラン人女性だ。

彼女たちのような女性は目的意識が高く、それを達成するための努力を怠らない。その態度と信念はほかの女性たちのモデルとなり、うねりを呼んで、イラン女性が困難を乗り越える力となってきた。

今回の大統領選に臆せず乗り込んだ女性候補は、いずれも、次のステージには進めなかった。だが、今後も女性候補は手を挙げ続けるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン主要濃縮施設の遠心分離機、「深刻な損傷」の公

ワールド

欧州委、米の10%関税受け入れ報道を一蹴 現段階で

ワールド

G7、移民密輸対策で制裁検討 犯罪者標的=草案文書

ワールド

トランプ氏「ロシアのG7除外は誤り」、中国参加にも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中