最新記事
気候変動

2030年には6億人が飢餓状態に、国連機関トップが警告

2024年7月29日(月)11時40分

昨年のCOP28では、国連の計画としては初めて食糧の生産・消費による温室効果ガス排出が取り上げられた。

それに伴い、農業における「公正な移行」という概念、そして気候変動を悪化させない食糧生産方式への移行に向けた農家支援に対する関心が高まった。

小規模生産者は、世界人口の70%以上に対する食糧を生産しているにもかかわらず、農地や資源に占める割合は3分の1にも満たない。

「こうした何億人もの小規模農家のなかには、生計を維持していくのがやっとという例も多い。そういう農家に特定の農業手法への移行をお願いするというのは負担が大きい」とラリオ総裁は語った。

さらに、こうした小規模生産者が「豊かな生活を送れるような」適切な生態系を生み出すべく、融資やインフラ、そして国の政策による支援を提供することが決定的に重要だと説明した。

だが、こうした課題に対処するニーズが高まっているにもかかわらず、食糧安全保障と栄養改善に向けた資金確保が追いついていないという。

「貧しい農村地域に住む小規模生産者に対する資金供給は、気候ファイナンスのフロー全体と比較すると、実際には以前より減少している」

米国の気候政策イニシアティブ(CPI)が昨年行った調査では、気候変動適応に向けた投資のうち、小規模農家の食糧安全保障に関連したものに注目した。

ラリオ総裁が注目しているのは、同調査において、こうした小規模農家への資金供給が世界全体の気候ファイナンス総額に占める比率が2018年の1.7%から2020年には0.8%に低下している点だ。

総裁は、生産だけでなく、食糧の供給や貯蔵、市場アクセス、品質保証に対する投資も急務だと指摘する。「こうしたバリューチェーンのあらゆる領域において、実際に多くの雇用が生まれる可能性がある」

だがラリオ総裁の指摘によれば、資金供給のギャップはかなり大きい。

総裁が引用した世界銀行の試算では、グローバルな食糧システムをもっと持続可能で包摂性の高い(インクルーシブな)ものにするには、年間3500-4000億ドルが必要とされている。

「だが、この問題を解決すべき理由を考えてみてほしい。何しろ肥満や栄養不良の治療費は約6兆ドル、こうしたシステムの気候変動・環境問題による被害は3兆ドルにも達するのだから」

(翻訳:エァクレーレン)



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプ関税15%の衝撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月5日号(7月29日発売)は「トランプ関税15%の衝撃」特集。例外的に低い税率は同盟国・日本への配慮か、ディールの罠

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ政権、肥満治療薬を試験的に公的医療保険の対

ビジネス

パウエル氏利下げ拒否なら理事会が主導権を、トランプ

ビジネス

ダイムラー・トラック、米関税で数億ユーロの損失計上

ワールド

カンボジア、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中