最新記事
クアッド

なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?

A POTEMKIN ALLIANCE?

2024年5月27日(月)15時15分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

バイデン政権は最近、クアッドほどは中国に対して挑発的でない日米豪比の枠組み──通称「スクワッド」──を優先させているように見える。これは、アメリカと、もともとの同盟国であるオーストラリア、日本、フィリピンで構成される非公式のグループである。

しかし、インド抜きの「反中同盟」にどの程度の意味があるだろうか。今世紀に入って中国の人民解放軍部隊と本格的に対峙し双方に死傷者を出した唯一の国がインドなのだ。

実際、バイデンの中国歩み寄り路線は、これまでほとんど成果を上げていない。むしろ、中国は台湾への圧力を強めているし、南シナ海での挑発的な行動も激化させている。

アメリカがアプローチを改めない限り、中国の台湾攻撃やロシアとの関係強化を抑止することはできないだろう。ロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかった二の舞いになる恐れがある。

インド太平洋地域の安全を維持するためには、クアッドに明確なミッションを持たせ、この枠組みの機能を強化する以外に道はない。バイデンやほかの3カ国の首脳は、この点をしっかり肝に銘じるべきだ。

それを怠れば、クアッドは実態を欠いた同盟になりかねない。「張り子のトラ」で中国を牽制することは不可能だ。

©Project Syndicate

newsweekjp_20240527043243.jpgブラマ・チェラニ
BRAHMA CHELLANEY
インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB「雇用と物価の板挟み」、今週の利下げ支持=S

ビジネス

米国株式市場=3指数下落、AIバブル懸念でハイテク

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀

ワールド

EU、ロシア中銀資産の無期限凍結で合意 ウクライナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中