最新記事
中央アジア

ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクライナの次」に侵略すると脅される

Neighbor deals major blow to Russia amid sanctions, invasion threats

2024年4月9日(火)17時41分
デービッド・ブレナン

ロシアの戦勝78周年記念軍事パレードに出席したトカエフ(2023年5月9日、モスクワ赤の広場)EYEPRESS via Reuters Connect

<かつて反政府デモの鎮圧を手助けして貰った「恩人」ロシアにも背を向け、西側諸国ににじり寄るカザフスタンのトカエフ政権>

ロシアとウクライナの戦争、および西側諸国との対立が続くなか、ロシアと旧ソ連構成国であるカザフスタンとの歴史的な結びつきにもほころびが生じつつあるようだ。ある大手営利団体によれば、カザフスタンで事業を展開するロシア企業が今、さまざまな問題に直面している。

ロシア中小企業の利益を代表する非政府組織Opora Rossii(オポラ・ロシア)のニコライ・ドゥナエフ副社長は、4月8日にロシアの有力紙イズベスチヤに対し、ロシアからカザフスタンへの送金処理に遅延が生じていると語った。カザフスタンの銀行がアメリカの二次制裁の対象になることを恐れて、ロシアとの取引に慎重になっているからだ。

 

ロシアからカザフスタンへの送金は、もう数週間にわたって処理が保留になっている。カザフスタンを本拠にキルギスタン、ジョージア、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタンで事業を展開しているカザフスタンの商業銀行「ハルク・バンク」などの金融機関が、ロシアとつながりのある取引の処理を拒んでいるためだ。

【動画】ロシア軍部隊も到着、カザフスタン暴動はいかに鎮圧されたか

ジョー・バイデン米大統領が2023年12月、対ロ制裁を強化する大統領令の中で米財務省に対して二次制裁を科す権限を与えたことを受けて、複数の国の銀行がロシア企業との取引にこれまで以上に慎重になっている。中国、トルコやアラブ首長国連邦などの国でも、ロシアの個人や企業との取引に問題が生じていることが報告されている。

親ロの中央アジア諸国に動揺

問題の背景には、2022年2月に始まったロシアとウクライナの戦争が続くなか、中央アジア諸国がロシアとの関係を見直していることがある。ロシアによるウクライナへの本格侵攻とそれに続く西側諸国による対ロ制裁を受け、これまでロシアと緊密な関係にあった中央アジア諸国の間に動揺が広がっているのだ。

カザフスタンはロシアがこの地域で最も信頼を寄せる同盟国の一つであり、2022年1月に大規模な反政府デモが起きた際には、カザフスタンの要請を受けたロシア治安部隊が暴動の鎮圧を手助けした。カザフスタンはロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)およびユーラシア経済同盟(EEU)にも加盟している。

しかしカザフスタンは、ウクライナ侵攻に関して国連総会で行われてきたロシア非難の決議案については何度も(反対ではなく)「棄権」を選択してきた。2022年9月には、ロシアによるウクライナ東部4州の一方的な併合を承認することを拒否した。

この翌月、カザフスタン政府のある高官はロイター通信に対して、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領がロシアとの二国間関係の見直しを行っていると述べていた。カザフスタンは一方で、欧州連合(EU)との経済協力の強化を目指して西側に接近する姿勢を見せている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界

ワールド

イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマス

ビジネス

米国株式市場=ダウ急反発、574ドル高 インフレ指

ワールド

共和党員の10%、トランプ氏への投票意思が低下=ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    F-16はまだか?スウェーデン製グリペン戦闘機の引き渡しも一時停止に

  • 2

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 3

    インドで「性暴力を受けた」、旅行者の告発が相次ぐ...なぜ多くの被害者は「泣き寝入り」になるのか?

  • 4

    「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...…

  • 5

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 6

    「集中力続かない」「ミスが増えた」...メンタル不調…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 9

    34罪状すべてで...トランプに有罪評決、不倫口止め裁…

  • 10

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中