最新記事
ガザ侵攻

やり過ぎたイスラエル、守りきれなくなった米バイデン政権が初めて安保理停戦決議の成立許す

Biden Admin Crosses Israel's Red Line

2024年3月26日(火)17時56分
アンドリュー・スタントン

ハマスに対する報復攻撃開始後、イスラエルを訪問してネタニヤフを抱擁したバイデンだが(2023年10月18日、テルアビブ) REUTERS/Evelyn Hockstein

<バイデン米政権は3月25日、「重要な同盟国」イスラエルのネタニヤフ首相が設定した一線をとうとう越えた。すでに3万人以上の民間人が犠牲になったガザへ、さらに地上侵攻を仕掛けようという暴挙は止められるのか>

ジョー・バイデン米政権は3月25日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が設定した一線を越えた。

AP通信の報道によれば、国連安全保障理事会(以下安保理)で25日に行われた停戦決議の採択で、アメリカはイスラエルが求めていた「拒否」ではなく棄権を選択した。パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとハマスの戦闘の停止、および、ハマスが拘束する人質全員の解放を要求するものだ。

米国が拒否ではなく棄権票を投じたため、停戦決議は初めて可決された。バイデンはガザ地区の人道状況を懸念しており、長らく緊密な同盟国と見なされてきた米国とイスラエルの関係は緊張感を増している。

【動画】水や電気を無目的に使い、ケチャップで血を演出...苦しむガザ住民をあざ笑うイスラエルのインフルエンサーたち

ネタニヤフは25日、国連決議採択の前に、バイデン政権に最後通達を行い、もし米国が拒否権を行使しなければ、イスラエル代表団の訪米を中止すると警告した、とイスラエル紙タイムズ・オブ・イスラエルは報じている。

タイムズ・オブ・イスラエルによれば、ツァヒ・ハネグビ国家安全保障顧問とロン・デルメル戦略問題担当相はアメリカを訪問し、ガザにおける人道援助の拡大について意見を交わすことになっていた。

しかし停戦決議の採択後、ネタニヤフ政権はイスラエル代表団の訪米を中止した。そして、「開戦以来、アメリカは安保理で一貫した立場をとってきたが、(投票の棄権は)明らかな後退」であり、「国際的な圧力によって、人質を解放することなく停戦できるという希望をハマスに与える」ものだと断じた。

「正当防衛」を主張するイスラエル

2023年10月7日、ハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けた結果、1200人のイスラエル人が犠牲になり、250人が人質として拘束された。現在も100人以上が拘束されている、とイスラエルは述べている。イスラエルは、ハマスの指導者たちを標的とし、人質を取り戻すという目標を掲げ、ガザ攻撃を開始。これまでに3万人以上のパレスチナ人たちが殺された。

バイデンは、イスラエルの重要な同盟国を自認しており、イスラエルには自国を守りハマスを追い詰める権利があると認める一方、ガザにおける民間人の死者数についても懸念も表明してきた。

世界のほかのリーダーに比べると、バイデンは恒久的な停戦を強く求めるまでには至っていないが、それでも、イスラエルに対しより慎重な対応を促すようになっており、ネタニヤフと食い違いが生じている。11月に大統領選挙を控えた国内でも、パレスチナの人道状況を懸念する民主党支持者からの圧力に直面している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中