最新記事
労働組合

バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?

THE UNION FIGHT

2024年3月23日(土)13時40分
ダニエル・ブッシュ(ホワイトハウス担当)

一連の労働法改革の取り組みに対し、共和党や米国商工会議所など影響力のある企業団体は猛然と反対している。彼らに言わせれば、組合が事業のコストを押し上げ、雇用の国外流出を促している。商工会議所のある役職者は書簡で、法案は雇用主を苦しめて「経済のあらゆる部門を混乱させる」と警告した。

バイデン政権はNLRBの権限を強化するための措置を講じているが、各地で州議会共和党が「労働権法」を制定する動きに十分に対抗できていないと批判されている。既に南部を中心に28州で導入されている労働権法は、労働者に組合加入を強制せず、選択の自由を守ると賛成派は主張する。

一方で、連邦最高裁判所は近年、労働者に繰り返し打撃を与えている。18年には、公共部門の非組合員に団体交渉のコストを負担させる州法を違憲とした。昨年6月の判決でも、ストを行った労働者に対して雇用主は損害賠償の訴訟を起こすことができるという意見を付けた。

組合をめぐる争いは、反組合色が濃い南部で投資している産業では特に熾烈だ。労働運動の指導者の間では、熱心な若手組織員が、伝統的に労働者に好意的ではない産業や地域で壁にぶつかり、最近の運動の勢いがそがれるのではないかという懸念が広がっている。これについてミルクマンは次のように語る。

「あなたがミレニアル世代のスターバックスのバリスタだとしよう。所属する店舗は投票で組合結成が決まった。でも、あれだけ頑張ったのに、職場では何も変わらない」

「労働史を振り返れば、物事が大きく変化するときは、一つの職場や、スターバックスやアップルストアの一店舗だけのことではない。大きな波が押し寄せるものだ。もしかすると波は起きつつあるのかもしれないが、その確証はない」

労働運動がその勢いを維持するためには、バイデンが再選されて組合に優しい政策が続く必要がある。共和党候補はドナルド・トランプ前大統領を先頭に、IRAをはじめバイデン政権の国内政策に対して攻撃を強めている。

フロリダ州知事のロン・デサンティスやニッキー・ヘイリー前国連大使らも、自分が大統領になったらIRAを廃止すると約束している。ヘイリーは同法の制定1周年に、「中国を利する増税とグリーン補助金で埋め尽くされた共産主義者のマニフェストだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

昨年10月に就任したマイク・ジョンソン下院議長の下で共和党が最初に承認した主な法案は、1年前にバイデン政権が成立させた気候変動対策の予算を数十億ドル削減するというものだった。ジョンソンは22年にIRAが成立した後に、その気候・エネルギー対策を「グリーンエネルギーの裏金」と呼んだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米地上軍のウクライナ派遣を否定 空軍通

ビジネス

訂正(19日配信記事)-グーグル、小型原発の建設地

ビジネス

米国株式市場=ナスダック・S&P下落、ジャクソンホ

ワールド

米・ハンガリー首脳、ロ・ウクライナ会談の候補地にブ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル」を建設中の国は?
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中