最新記事
米ロ関係

【本誌調査で判明】米政府、モスクワの大使館維持のためにロシア企業と契約 800万ドルの支払いは妥当か?

THE PRICE OF DIPLOMACY

2024年3月13日(水)13時30分
ケイト・プラマー(本誌記者)

240319p42_CRT_04.jpg

モスクワの駐ロシア大使館をめぐるロシア企業への支出は800万ドル以上 GREG MATHIESONーMAI/GETTY IMAGES

「制裁は形だけ」と思われる

同社はオランダ籍のビオン社のロシア事業が、22年11月に売却されたもので23年10月には完全にロシア人所有の会社になった。同社自体はアメリカの制裁対象ではないが、米政府はプーチンの「戦争マシン」を弱体化させるため、ロシアのエリートや金融機関、その他の業界にも繰り返し制裁の網をかけてきた。ジョー・バイデン米大統領は23年12月、ロシアの軍事サプライチェーンを制裁対象とする大統領令に署名したばかりだ。

ある政府当局者は、省内では契約が制裁対象の個人とつながっていないことを確認するためのデューデリジェンス(適正評価手続き)を実施していると語った。だがウクライナの運動団体「戦争と制裁」は、カナダと同様にビンペルコムを制裁リストに加えるよう各国に求めている。

ビンペルコムは「ロシア連邦政府にとって重要な収入源」だと、同団体の声明は指摘する。「(同社は)ウクライナの民主的なプロセスと制度を弱体化させ、平和、安定、安全保障、主権、独立を脅かしている」

別の運動団体「リーブ・ロシア」も、声明で次のように述べている。「ビンペルコムが積極的にロシア政府に協力していることは、同国政府関係者も認めている。特筆すべきは(ロシア)政府の要請によって、22年2月24日以降に占領されたウクライナ領土でのロシアとの通信接続の確立に協力し、国内ローミングサービスを提供していることだ」

ビンペルコムのアレクサンドル・アレクサンドロビッチ・パンコフ社長は国際的な制裁対象ではないが、制裁データサイト「オープンサンクションズ」によると、ロシア政府とつながりがある。ロシア国内の報道によれば、かつて連邦政府通信情報局や連邦通信情報化省などの政府機関で仕事をしていたという。

米国務省の報道官は本誌に対し、全ての在外公館は基本サービスを現地企業に依存していると語った。別の政府関係者は、アメリカや第三国の業者をロシアに呼び寄せるのは難しいため、今契約は現実的なものだと述べた。それでも現地企業との契約には安全保障上のリスクが付きまとうことは、両者とも認めている。

ビンペルコムを除けば、本誌が分析した企業はいずれも制裁対象の企業と直接的な関係はないが、明確な判定は難しいと専門家は言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中東紛争、長期化次第で世界経済に大きな影響=IMF

ビジネス

米利下げペース減速の見通し、イラン情勢悪化と原油高

ワールド

トランプ大統領、スペインとの貿易を全面停止へ 基地

ワールド

トランプ氏、軍に先制行動を命令 イランの米攻撃懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び率を記録した「勝因」と「今後の課題」
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 6
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中