最新記事
教育

日本の教育現場にはもっと多様な人材が必要

2024年1月24日(水)11時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
小学校の授業風景

欧米諸国では、多様な背景を持った教員を採用している Jacob Lund/Shutterstock

<教職以外の経験「ゼロ」の人が大多数で、特に小学校教員は8割以上が教育専攻出身>

現在では、小学校の高学年で教科担任制が導入されている。高学年になると内容が高度化し、1人の教員が全教科を教えるのは辛い。授業の質を担保し、中学校教育との接続を円滑にするねらいがある。教員にしても自身の得意分野に注力でき、負担が軽減される。

対象の教科は、算数・理科・体育・外国語の4つだ。「STEAM教育」(科学、技術、工学・ものづくり、芸術・リベラルアーツ、数学の各分野)が重視されているためで、これらについては早いうちから質の高い授業をしよう、という意図がある。そうである以上、当該分野の専門性が高い教員の採用を増やしたいところだ。大学で理系の分野を専攻した人が来てくれると心強いが、現状はどうか。<表1>は、昨年春に大学を卒業して教員に就職した者の専攻をみたものだ。

data240124-chart01.png


どの校種も、教育専攻(≒教育学部出身者)が最も多くなっている。幼稚園では76%、小学校では84%をも占める。中学校と高校では、専門学部の出身者も多少はいる。理学・工学・農学といった理系専攻者は、高校教員の中ではおよそ2割。しかし小学校教員では0.3%しかいない。

小学校の教員免許状を取得するには、教職課程の基礎科目に加えて、全教科の教科教育法や内容研究も履修しないといけない。実験や実習が多い理系学部の学生にとっては、ハードルが高い。中高の免許状保有者は、当該の教科を小学校で教えることができるが(教育職員免許法第16条の5)、この制度はもっと活用されていい。全教科を担当できる免許状は、入職後に取ってもらうこともできる。

最近では、当該校種の免許状を持っていなくても、教員採用試験の受験を認める自治体も出てきた。採用決定後に2年ほどかけて免許状を取ってもらえばいい、という考えで、民間企業の専門人材や無職の博士号保持者にも広く門戸が開かれる。ほぼ教育学部一色だった教員の出身畑も多様化し、学校にも新風が吹き込まれるだろう。

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英財務相、11月26日に年次予算発表 財政を「厳し

ワールド

金総書記、韓国国会議長と握手 中国の抗日戦勝記念式

ワールド

イスラエル軍、ガザ市で作戦継続 人口密集地に兵力投

ビジネス

トルコ8月CPI、前年比+32.95%に鈍化 予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中