最新記事
少年犯罪

少年犯罪の元終身刑囚が語る「16歳で犯したクリスマスの殺人事件」偽りを捨て得た許しの真実

I Killed When I Was Sixteen

2023年12月25日(月)20時45分
ロナルド・オリビエ(元受刑者、ルイジアナ州仮釈放プロジェクト活動家)
元終身刑受刑者が語る「16歳で犯した殺人事件」偽りを捨て得た許しと自由

自らの犯罪と獄中体験を直視し、今は自由になったと語るオリビエ THOMAS NELSON

<あの日、ギャング気取りで14歳の少年を殺して未成年ながら終身刑に。刑務所で正しく生きることを学んだという筆者が被害者の母親へ謝罪し、自由を得るまでの道のり>

「無実です」。1991年のクリスマスの日の事件について法廷で質問されたとき、私はそう答えた。14歳の少年の殺害に関しては何も知らないと主張した。嘘だった。

その夜のことは全て覚えている。ルイジアナ州出身の私は当時16歳。ギャングスタイルで、銃を腰に差して街を歩くと生きていると実感できた。

午後9時頃、私は友人のリーキーとニューオーリンズのカナル・ストリートにいた。こっちを見ている男たちがいると、リーキーが言った。10人の集団の中心に、私たちと因縁の仲のダッキーがいた。

私たちは歩いた。彼らは付いてきた。バス停で待つ人々の中に紛れ込むと、すぐバスが来た。乗ろうとしたとき、肩をつかまれて引っ張られた。振り向くと、彼らがいた。

私は銃を抜いた。私をつかんだ少年を撃ち、何度かダッキーを撃ち、それから最後の1発をまた少年に撃った。

飛び乗ったバスの中で、高齢の男性が叫んでいた。「奴ら、強盗だよな。俺はちゃんと見てたぞ!」

私は自分に同じことを言い聞かせた。正当防衛だった、と。だが、本当は違うと知っていた。それに、死んでるはずはないと考えていた。

翌日、地元のニュース番組で、カナル・ストリートからの生中継を目にした。殺人事件で、1人が死亡したという。それでも、未成年だから大丈夫だと自信があった。警察へ行き、強盗未遂の話をした。

数カ月後、私は裁判にかけられていた。容疑は最も重い第1級殺人だった。

評決を待つ間、死刑に怯える私は、母の言葉を思い出した。「大変なことになって、私も助けてあげられないときは、神に助けを求めなさい」

私は祈った。「神よ、生かしてもらえるのなら、私は残りの人生を懸けてあなたに仕えます」。1時間後に聞いた評決は第2級殺人で有罪。仮釈放なしの終身刑だった。

被害者の母親との対話

当初は刑務所で生き残るのに必死だった。

だが徐々に、聖職者や受刑者仲間など、私を気にかけてくれる人に出会った。彼らに励まされて高校卒業資格を取得し、聖書学校で学び、法律の勉強をした。正しく生きるとはどういうことか、彼らは教えてくれた。

あの時祈ったとおり、私は変わったのだ。

ただ一つ、欠けていることがあった。殺害した少年の母親に、私は謝罪したかった。

ようやく機会が訪れたのは、服役してから25年以上が過ぎたときだ。

米連邦最高裁判所が、未成年者に対する終身刑に違憲判断を下したことがきっかけで、法廷で仮釈放を要望するチャンスを手にした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻

ワールド

米、ウクライナの長距離ミサイル使用を制限 ロシア国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    【独占】高橋一生が「台湾有事」題材のドラマ『零日…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中