最新記事
ウクライナ情勢

「ウクライナは既に勝利している」...ティモシェンコ元ウクライナ首相がそう語る理由とは?

ISSUES 2024: UKRAINE WAR

2023年12月20日(水)14時15分
ユリア・ティモシェンコ(元ウクライナ首相)
首都キーウにある巨大な祖国記念碑の女神像

首都キーウにある巨大な祖国記念碑の女神像のイラスト ILLUSTRATION FROM PROJECT SYNDICATE YEAR AHEAD 2024 MAGAZINE

<自由と祖国を守るため国民が一致団結。軍事費10倍のロシアに創意工夫で善戦して西側の一員と認められた今、ウクライナの未来は明るい。本誌「ISSUES 2024」特集より>

ロシアがウクライナに全面侵攻を仕掛けて2年近くがたつが、終結の兆しはどこにも見えない。それでもウクライナはいくつもの重要な戦いに勝利した。その戦いの多くは今回の侵攻のずっと前から始まっていたものだ。

こうした勝利が重なり、この卑劣な戦争における最終的な勝利をわれわれにもたらしてくれると私は信じている。

1991年に独立を回復して以来、ウクライナはヨーロッパの一員だとなかなか認められず苦労した。だが今日、ウクライナをロシアと西側をつなぐ緩衝地帯とみる人はいない。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は熱でも出したのか、ウクライナが「ルースキー・ミール(ロシア世界)」に復帰するというばかげた夢を見て侵略に踏み切ったらしい。だがたとえロシアでも、そんな夢を見るのは極め付きに妄想癖の強い人間だけだ。

今では全世界がウクライナを、フランスやイタリアと同じ西側の一員とみている。われわれは西側と価値観を共有し、自由と民主主義と法の支配を重んじる。ロシアの侵略者に必然の勝利を収めた暁には、EUとNATOへの加盟を果たすだろう。

もう1つ、国内で長く続いてきた戦いについても勝利を宣言できる。

独立回復後もウクライナの人々は、独裁政権打倒のため2度も立ち上がらなければならなかった。独裁政権は東部と西部、ウクライナ語地域とロシア語地域の分断に容赦なく付け込んだ。

ロシアはわが国への侵攻と占領において、分断を利用したいと考えたに違いない。打ち負かされ、分裂した人々のほうが統治しやすい。

だが浅はかな反目が国の存亡に関わることを、今では事実上、全国民が理解している。東部の広い地域がロシアの支配下にあるなか、完全に統一された主権国家ウクライナだけが国民の自由を守ることができるのは、かつてないほど明白だ。

この新たな団結は、職業や地域や年齢を問わずあらゆる男女が命懸けで国を守る姿に日々、見て取ることができる。前線でも銃後でも、戦闘部隊にいるのは国民だ。

ロシアは刑務所の囚人を前線に送るが、ウクライナでは超一流の人材が戦いに身を投じてきた。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

為替介入「当然考えられる」と片山財務相、無秩序なら

ビジネス

債務残高、対GDP比率引き下げて発散しないようにす

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は予想上回る 25年

ビジネス

AIブームが新リスク、金融業界からは買収の高プレミ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中