最新記事
台湾

中国が暗躍した「野党陣営の一本化」は不発に、来年1月に迫る台湾の総統選挙で笑うのは誰か?

China Almost Won

2023年12月13日(水)18時15分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

231219P42_TWN_02v2.jpg

台北市内のビル外壁に掲げられた民進党の選挙ポスター(左が総統候補の頼清徳) ALEX WONG/GETTY IMAGES

ところが各種の世論調査では、民進党の頼が一貫して35~40%の支持を得てトップを走っていた。侯と柯はそれぞれ15~30%の支持率で2位を争い、郭の支持率は10%に達しなかった。

そこで中国側は考えた。

まずは郭に出馬を断念してもらい、一方で侯と柯を正副総統候補のセットにして一本化しよう。そうすれば票の分散を防ぐことができ、親中派の統一戦線を組めるはずだった。

テリー・ゴウを封じたが

それで中国政府は、10月23日にフォックスコンの経理に不正の疑いありとして調査に乗り出した。たちまち同社の株価は3%ほど急落し、郭は公の場から姿を消した。

1カ月後、フォックスコンの中国子会社に2万元(約40万円)というささやかな罰金が科された。

そして郭は、出馬に必要な100万超の有権者の署名を集め、副総統候補も指名していたのに、11月24日の期限までに正式な立候補届を出さなかった。

だが、まだ中国は手放しで喜べない。

水面下で国民党と民衆党の候補一本化に向けた必死の努力を続けていた。一本化すれば勝利の確率は高くなるから、侯にとっても柯にとっても悪い話ではないはずだった。

だが問題は、どちらが副総統に甘んじ、どちらが総統候補になるかだった。

どちらも譲らず、やむなく総統経験者で国民党の長老である馬英久(マー・インチウ、習との個人的パイプも太い)が割って入り、自党の侯を説き伏せ、民衆党・柯の求める条件で一本化する合意を取り付けた。これが11月半ばのこと。タイミングといい強引なやり方といい、習からの強い圧力があったのは間違いない。

だが、この上意下達の合意はすぐに崩れ去った。図に乗った柯が条件を追加し、普段は温厚な侯を怒らせたからだ。

それに、そもそも副総統には何の権限もない。

だから個人的な野心は別にしても、どちらの陣営も自党の候補者が副総統に納まることには抵抗していた。交渉はぎりぎりまで続いたが、折り合いはつかず、最後は互いに責任を押し付け合う非難の応酬で終わった。

中国は悔しくて歯ぎしりしていることだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スペイン、内燃エンジン車販売禁止計画の堅持要請 欧

ビジネス

米コカ・コーラ、英コスタ・コーヒー売却計画が破談の

ワールド

韓国警察、旧統一教会本部などを捜索 議員らへの金品

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 「解決策模索
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中