最新記事
中国軍

中国の「ノルマンディー作戦」を担う強襲揚陸艦の新造艦が撮影される

Photo Reveals China's New Amphibious Assault Ship for D-Day-Style Invasion

2023年12月21日(木)18時57分
アーディル・ブラール
上海の造船所で進水した4席目の075型強襲揚陸艦

上海の造船所で進水した4席目の075型強襲揚陸艦。地元マニアが撮影した WEIBO

<伝統的に陸戦型の中国がいよいよ海洋覇権に手を伸ばす準備を整えつつある>

中国海軍は水陸両用作戦の遂行能力を大幅に高めようとしている。水陸両用のヘリコプター空母とも言うべき「075型強襲揚陸艦」は既に3隻が就役し、うち1隻が鹿児島県沖の海峡を通過するなど示威的な航海を実施しているが、最近その4番艦がひっそりと進水する模様が確認された。

<動画>075型強襲揚陸艦の多彩な装備を見る

4隻目の075型が上海の造船会社「滬東中華造船」から進水する場面を、地元のマニアが撮影。タグボートに囲まれて海に浮かぶ4番艦をとらえた写真は12月14日、中国版Xの新浪微博(ウェイボー)で共有された。

習近平(シー・チンピン)国家主席の指揮下、中国は世界に冠たる軍事大国になるべく、着々と軍備拡大を進めている。次世代型戦闘機・戦略爆撃機の開発に注力する一方、「遠洋」艦隊の配備を目指し、空母や大型駆逐艦の建造を進めている。

中国海軍は既に水上戦闘艦の艦艇数では、米軍を抜いて世界一の規模を誇っている。今のペースで新型艦の建造が進めば、トン数でも米海軍を抜くのは時間の問題だ。


水陸両用戦は未経験

もちろん、米軍の実戦経験や技術的ノウハウに中国軍が短期間で追いつくのは困難だ。米海軍が保有する現役の空母は11隻、中国の空母保有数は2隻にすぎない。しかも米軍は原子力推進の空母を世界に先駆けて運用してきたが、中国は戦闘機を飛ばせる「平甲板型」の原子力船は、開発にもこぎつけていない。

それでも075型のような揚陸艦の配備計画を進めていることから、中国の意図が透けて見える。伝統的にインドとの国境紛争など地上戦への備えを固めてきた中国軍だが、今や未経験の分野である水陸両用戦の戦闘能力を高めようとしているのだ。

公開情報によれば、075型は全長232メートル。排水量は最大4万トン。兵員800人、ヘリコプター28機、装甲戦闘車両60台、上陸用舟艇2隻を搭載でき、中国版「海兵隊」とも言うべき中国海軍陸戦隊の作戦を支える艦艇となる。

中国は東・南シナ海の歴史的に係争の種となってきた島々や他国の排他的経済水域(EEZ)で挑発行為を繰り返し、近隣諸国との緊張をエスカレートさせている。太平洋、さらにはその向こうまで海洋覇権を拡大させる野望があるのは明らかで、今後はそのための軍事力の誇示が中国海軍の重要なミッションになりそうだ。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、一時150円台 米経済堅調

ワールド

イスラエル、ガザ人道財団へ3000万ドル拠出で合意

ワールド

パレスチナ国家承認は「2国家解決」協議の最終段階=

ワールド

トランプ氏、製薬17社に書簡 処方薬価格引き下げへ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中