最新記事
安全保障

「一線を越えた」北朝鮮の挑発を中国が黙認する謎

Nuclear Rumblings

2023年11月29日(水)10時55分
イ・ミンヨン(韓国・淑明女子大学客員教授)

NW_KTA_01-20231129.jpg

北朝鮮は 11月21日に軍事偵察衛星の打ち上げに成功したと発表した KCNAーREUTERS

北朝鮮が7回目の核実験の準備を終えたと報じられてから、既に1年が過ぎた。

今年4月には在韓米軍司令官のポール・ラカメラ大将が、北朝鮮は次の核実験に向けた技術的な準備を完了しており、後は金正恩総(キム・ジョンウン)書記の決断を待つだけだと述べた。

次の実験で核弾頭の小型化に成功すれば、ICBMだけでなく戦術核弾頭の開発も加速させることができる。

【関連写真】【写真】「この人誰?」な、影武者疑惑の金正恩 を見る


中国東北部が核汚染?

核兵器の使用に関する北朝鮮の意欲も、懸念されるレベルにまで高まっている。北朝鮮は昨年9月に核使用の政策を法令化し、核による先制攻撃を行う条件などを明記した。

この法令には、金正恩をはじめとする国家の指導部が危険にさらされたと見なされる場合には、核が自動的に使用されると定められている。

このケースで特に警戒すべきなのは、核兵器が誤解や誤った判断によって使用される可能性があることだ。

近隣諸国にしてみれば、意思決定構造が閉鎖的な北朝鮮が核兵器を保有していることは、とてつもなく大きな安全保障上の脅威となる。この問題について、最も大きな声を上げるべきなのが中国だ。

アメリカと比べても、中国は北朝鮮の核兵器開発から直接的な影響を受ける可能性がはるかに高い。北朝鮮がロシアとの軍事協力を模索している今、中国は対北朝鮮戦略の見直しを早急に行うべきだろう。

日米韓など地域の大国は北朝鮮の脅威を排除し、ぜひとも北東アジアから安全保障上の脅威をなくしたい。だが中国は北朝鮮の核開発を気に留めず、北東アジアを危険区域に変えるという戦略的な過ちを犯している。

中国にとって最も差し迫ったリスクは、多くの中国国民が放射能汚染にさらされる可能性だ。香港メディアは、北朝鮮の核実験場がある豊渓里(ブンゲリ)から約70キロの距離にある中国・吉林省で放射能レベルが上昇していると報じている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中