最新記事
中東

パレスチナに肩入れする国際世論に多くのイスラエル人が開き直っている...ガザ包囲「4段階作戦」の出口は

No End in Sight

2023年11月10日(金)10時55分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

231114P38_CJS_02.jpg

イスラエル軍基地で会見に臨んだネタニヤフ(左)とガラント(10月28日) ABIR SULTAN-POOL-REUTERS

国際世論に背を向けて

アメリカが拒否権を行使したものの、10月18日には国連安全保障理事会で「戦闘の人道的中断」を求める決議案が審議された。27日に開催された国連総会ではハマスの奇襲を非難する決議案は否決されたが、「人道的休戦」を求める決議案は採択された。

これらの投票で、この紛争に対する見方が真っ二つに分かれていることが明らかになった。現状ではイスラエルに不利な見方が大勢を占める。この傾向は戦闘の進展につれてますます強まるだろう。

そもそもハマスのテロ攻撃から始まった戦争なのに、それを忘れたかのように世界中の人々がパレスチナ人に同情している──多くのイスラエル人が今、そう感じている。米ブルームバーグ・ニュースのエルサレム支局長を務めるイーサン・ブロナーに言わせると、パレスチナに肩入れする国際世論に、多くのイスラエル人はあえて抗弁せず、ただ開き直っているという。

1日の死者数としてはホロコースト(ナチスのユダヤ人虐殺)以降、ハマスは最も多くのユダヤ人を殺した。国際社会がその罪を糾弾せず、ハマスの発表をうのみにしてガザの病院で起きた爆発をイスラエル軍の空爆だと決め付けるなら、どう思われようと知ったことではない──多くのイスラエル人はそう考えている。国家の存続が脅かされているのだから、われわれは必要な自衛措置を取る、と。

それがガラントの言う4段階の戦争──ハマスがイスラエルとの境界を二度と再び脅かせないようにする作戦だ。

長年にわたりイスラエルを強く支持してきたバイデンは、ハマスの奇襲以降、表向きは一貫してイスラエルを擁護してきた。しかし舞台裏では、ネタニヤフに強力なプレッシャーをかけている。

10月18日にイスラエルを訪問したときは、ネタニヤフ政権の閣議に出席して、閣僚たちに厳しい質問を浴びせかけた。この戦争が終わった後の計画はあるのか。誰がガザを統治し、再建するのか。次の指導者が誰になるのであれ、ガザがイスラエルにとって新たな脅威にならないようにするための方策はあるのか。

イスラエルの閣僚たちは黙りこくった。誰もこうしたことを考えていなかったのだ。

バイデンは、アメリカが2001年の米同時多発テロ後、怒りに任せて長期的な計画もないままアフガニスタンとイラクに乗り込み、悲惨な結果を招いた過去に言及。イスラエルは本格的な戦争に突入する前に、戦後のことをよく考える必要があると諭した。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ

ビジネス

午前の日経平均は続落、米雇用統計前の警戒ムード 一

ビジネス

経済同友会の代表幹事に山口・日本IBM社長、新浪氏

ワールド

台湾総統、財政関連法改正に反対 野党主導の議会と溝
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中