最新記事
エジプト

「とりあえず来ないでほしいのだが...」検問所を閉鎖するエジプトの「本音」と「建前」の中身とは?

EGYPTIAN FEARS

2023年10月27日(金)17時25分
ノズモット・グバダモシ(ジャーナリスト)

231031P28_EJP_Chart.png

ハマスがガザを実効支配してからの16年間、イスラエルはガザへの人と物の出入りを徹底的に制限し、ガザを「天井のない監獄」と呼ばれる状態にしてきた。エジプトもこれに協力してラファの往来を制限した。

今回のハマスの攻撃後、イスラエルはガザ封鎖をさらに徹底し、電気や食料、水の供給も遮断。ヨルダン、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)などアラブ諸国がガザ住民の苦境を見かねて人道支援を呼びかけ、ラファ検問所前には物資を満載したトラックが約100台も集結した。

だがエジプトはイスラエルの空爆が続いていることを理由にトラックの通行を許可せず、イスラエルはハマスが人質を解放しない限り空爆停止には応じられないと主張。ガザの人道危機は悪化の一途をたどった。

シナイ半島は1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領されたが、キャンプデービッド合意に基づき82年にエジプトに返還された。

長年エジプトを支配し、「アラブの春」で失脚したホスニ・ムバラク大統領は83年にマーガレット・サッチャー英首相(当時)と密約を交わし、レバノンにいるパレスチナ難民のシナイ半島移住を認めたとメディアが伝えたが、本人は生前この報道を否定。失脚直前の2010年にもイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からシナイ半島にパレスチナ国家をつくる構想を提案されたが、これも拒否したと主張した。

エジプトでは今、イスラエルが地上侵攻を開始すればガザ住民がこの半島に大量に押し寄せるとの懸念が広がっている。イスラエル駐在のエジプト大使アミラ・オロンは10月11日、「シナイ半島はエジプトの領土だ」とX(旧ツイッター)に投稿。イスラエル軍の作戦のためにこの半島を避難区域にするようなことは許さないとの意思を示した。

しかし、シナイ半島はガザ住民の一時的な避難区域どころか、恒久的な住みかとなる可能性もある。実際、過去のイスラエルとパレスチナの紛争で近隣のアラブ諸国に逃れたパレスチナ人の多くはその後も故郷に帰れなかった。

イスラエルが建国した48年の第1次中東戦争で家を追われたパレスチナ難民の子孫には、今でも近隣諸国の難民キャンプで暮らしている人が少なくない。49~67年の大半の時期エジプトの支配下にあったガザの住民もまた、その多くは48年に発生した難民の子孫だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

南ア・イスラエル、外交官を相互追放 ガザ巡る対立激

ワールド

FRBの利下げ見送りは失策、ウォーシュ氏は議長に適

ワールド

元CNN司会者が逮捕、ミネソタ州教会でのデモ巡り

ビジネス

2回利下げは基本シナリオでない、インフレ高止まり懸
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 7
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 8
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中