最新記事
中東

アメリカはなぜ、ガザ地区の病院爆発はパレスチナ側の責任と断定したのか

Why U.S. Intel Says Israel Did Not Attack Gaza Hospital

2023年10月19日(木)19時08分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元米陸軍情報分析官)

IAFはまた、パレスチナ側がこれまでにイスラエルに向けて撃ったロケット弾が多数、ガザ地区内に落下して爆発したことを示すデータと地図も公開した。「病院、国連の学校、モスク、レストラン、各国の出先機関、ホテルなど多数の民間人がいる建物のすぐそばにある拠点からロケット弾が発射され」、それらの多くが発射後すぐに落下して大きな被害を出したと、IAFは分析している。

ハマス幹部は本誌に対し、目撃談や砲弾の残骸など、病院がイスラエル軍の空爆を受けたことを示す証拠を収集中で、まとまり次第広く公開すると述べたが、いつまとまるかは明言を避けた。

ガザ地区にある唯一のキリスト教系の病院であるアハリ・アラブ病院を運営するエルサレム中東聖公会は爆発について声明を出し、イスラエルの空爆の最中で起きた「残虐な攻撃」に遺憾の意を表明した。

パレスチナ側の仕業だとみる米空軍の情報将校は、「現段階で急いで結論を出すことは控えるべきだ」と断りつつ、「それでも事実は否定できない」と主張する。

ジョー・バイデン米大統領は18日、イスラエルを訪問し、同国のベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した際、昨日は病院爆発の知らせを受け、「深い悲しみと激しい怒り」を抱いたと述べ、「向こうのチームが行なったようだ」と、遠回しにパレスチナ側に責任があるとの見解を示した。そう判断した根拠は何かと記者団に詰め寄られると、バイデンは米国防総省が「私に見せたデータ」だと答えた。

人道支援が急務とグテレス

米国家安全保障会議(NSC)のエイドリアン・ワトソン報道官は18日朝、「引き続き情報を収集中だが、上空からの画像、傍受した通信、公開情報に基づき、昨日ガザ地区の病院で起きた爆発はイスラエルの責任ではないというのが、現時点での私たちの評価だ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

国連のアントニオ・グテレス事務総長は訪問先の北京で18日、ガザのパレスチナ人は「崖っぷちに追い込まれている」として、緊急の人道支援のための停戦を呼びかけた。グテレスはまた、当初の報道を受けて病院への「攻撃で何百人もの死者が出た」ことで「恐怖におののいた」とも述べた。

ここ数十年で最も多くの犠牲者を出しているイスラエルとパレスチナの戦闘は、10月7日にハマスがイスラエル領内に加えた攻撃で始まり、これまでにイスラエル側では1400人、ガザ地区では少なくとも3400人が死亡したと伝えられている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中