最新記事
米大統領選

やるだけ無駄!共和党候補者のテレビ討論会、「減税」には一切触れず「中絶問題」についても沈黙

What, No Tax Cuts?

2023年10月3日(火)17時50分
アレクサンダー・サモン
大統領選の共和党候補者7人が有権者の心をつかもうと論戦を繰り広げた

大統領選の共和党候補者7人が有権者の心をつかもうと論戦を繰り広げた MIKE BLAKEーREUTERS

<共和党候補7人が政策をアピール。しかし再優先事項の減税には一切触れず>

9月27日、FOXビジネス・ネットワークは2024年の大統領選に向け、共和党候補者の2回目の討論会を生中継で伝えた。現実的な政策に関していい質問がいくつも出たが明確な回答はなく、一方で7人の候補は浮世離れした政策をアピールした。

しかも最も共和党らしい政策が問われることは、一度もなかった。

その政策とは、減税だ。どんなに威勢よく、連邦政府機関を解体し、移民を追放し、トランスジェンダーの権利を制限するとぶち上げても、共和党の最優先事項は減税だ。

【動画】やるだけ無駄!共和党候補者の2回目の討論会

背景には過去数十年の豊富な成功体験がある。次々に法案を通し政策を実現してきた共和党には、(連邦政府を破壊し人権を抑圧する以外に)目標があまり残っていない。

連邦最高裁判所以下、司法は今後数十年間共和党の天下だから、人工妊娠中絶の禁止や投票制限法の拡大、環境規制の撤廃は確実に進むだろう。

フィリバスター(議事妨害)が法案成立を妨げる現代においては、どんな大統領も目玉の法案を2つ用意する。

ドナルド・トランプは16年、減税と医療保険制度改革(オバマケア)の廃止を公約に掲げ、選挙に勝利した。大統領就任後は大型減税を実行に移す一方、オバマケア廃止には失敗。富裕層と企業を優遇する税制改革は不人気だったが、国民から医療保険を奪う政策はこれに輪をかけて評判が悪く、実現不可能だったのだ。

討論会でオバマケア廃止は実現するのかと尋ねられたマイク・ペンス候補が、回答を拒否したのも無理はない。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領もトランプと大差なかった。テロとの戦いを理由に愛国者法など国民の権利を制限する法律を成立させたが、最大の成果は富裕層と企業を優遇する大型減税だった。

中絶問題についても沈黙

共和党政権が減税を行うのは自明だが、問題はそのやり方と規模だ。最有力候補のトランプは「法人税を15%まで引き下げることも考えられる」と、ワシントン・ポスト紙は報じた。トランプは前政権で、既に法人税を35%から21%まで引き下げている。

討論会で減税が全く話題に出なかったわけではない。

ニッキー・ヘイリーはインフレ対策として中流層の減税を挙げたが、その直後に州税・地方税の控除を撤廃すると誓った。こうした税の控除には、既にトランプが厳しい上限を設けている。ややこしい話だが、民主党が強く税金の高い州では州税・地方税の控除が事実上高額所得者への減税となっており、トランプはこれを標的としたのだ。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、ガザ和平第2段階移行の重要課題を米

ビジネス

10月実質賃金0.7%減、物価高が家計下押し「状況

ワールド

印南部ナイトクラブ火災、当局が原因調査命令 犠牲者

ワールド

ベセント米財務長官、大豆農場の売却明かす 倫理協定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中