最新記事
ウクライナ情勢

戦略爆撃機を破壊し、モスクワを恐怖に陥れるーウクライナドローン軍がロシア領内を激しく侵食しはじめた

Drone Strikes on Russian Airfields May Be Coming from Inside Russia: U.K.

2023年8月23日(水)17時23分
エリー・クック

ドローンの訓練をするウクライナ兵(8月17日、南部ザポリージャ) REUTERS/Viacheslav Ratynskyi

<ロシア国内の空軍基地がまた攻撃を受け、ツポレフ22M3戦略爆撃機が炎に包まれた。しかも、攻撃したウクライナのヘリコプター型攻撃ドローンはロシア国内から飛来しているようだ>

ウクライナ国境から数百キロメートル離れたロシアの主要空軍基地で、超音速爆撃機を標的にしたドローン攻撃がおこなわれたことが注目を集めている。この攻撃はロシア領内から仕掛けられた可能性があると、新たな検証で指摘されたからだ。

英国防省が8月22日に発表したところによれば、モスクワとサンクトペテルブルクのあいだ、ウクライナ北部にあるロシアとの国境から約650キロに位置するノブゴロド州のソルツイ2(Soltsy-2)空軍基地で、ロシアのTu-22M3(ツポレフ22M3)爆撃機が破壊された可能性が「きわめて高い」という。

ロシア政府は、モスクワ時間8月19日午前10時ごろ、ウクライナがヘリコプター型無人航空機(UAV)で空軍基地を攻撃したと述べ、航空機1機が損傷を受けたと付け加えた。

英国防省はX(旧ツイッター)への投稿のなかで、この攻撃をヘリコプター型無人航空機(UAV)がおこなったのであれば、「ロシア軍に対する一部のUAV攻撃は、ロシア領内を起点としているとする見方の信憑性が高まる」と述べている。

攻撃はロシア国内から?

英国防省によれば、ヘリコプター型UAVの航続距離では、ロシア国外からソルツイ2空軍基地に到達できない可能性が高いという。ニューズウィークは、ウクライナとロシア両国の国防省にコメントを求めている。

ヘリコプター型ドローンは、ウクライナが重点的に投資している幅広い技術の一つであり、現在では、ウクライナ政府の戦争遂行の取り組みに深く組み込まれている。

注目を集めたいくつかの攻撃では、ロシアが併合したクリミア半島とロシア本土を結ぶ主要な橋や、黒海に位置するロシア軍の海軍基地、ロシアの首都そのものが攻撃用ドローンの標的になっている。ロシア国防省は22日未明、モスクワ上空でウクライナのUAV2機を撃墜したほか、国境付近のブリャンスク州上空でさらにドローン2機を撃墜したと発表した。

ロシア国防省は週末、ノブゴロド州でロシアの複数の超音速爆撃機を攻撃したドローンを「小火器で撃墜した」と述べ、基地で発生した火災は消防隊が鎮火したと続けた。

だが、その後すぐに、少なくとも1機のTu-22M3爆撃機が完全に炎に包まれていることを示す画像が出まわりはじめた。ロシアはTu-22M3爆撃機を、戦争初期のころから使用している。2022年4月におこなわれた港湾都市マウリポリの包囲戦でも、無誘導爆弾の投下にTu-22M3爆撃機が用いられた。また、ウクライナは2023年8月、ソルツイ2空軍基地を拠点とするTu-22M3爆撃機が、ウクライナ領内にKh-22ミサイルを発射したと発表している。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人

ワールド

プーチン氏、対ウクライナ姿勢変えず 米制裁期限近づ

ワールド

トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命令 メ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中