最新記事
香港

住宅不足の香港、当局が若者向け「ホステル」補助金を拡大 反政府デモ招く原因の排除目指す?

2023年7月16日(日)10時54分
ロイター
香港青年連会が運営するホステル「ビーリビング・ユース・ハブ」

「ヤングアダルト」と呼ばれる世代にとって、実家を離れることは1つの通過儀礼だ。だが、慢性的な住宅不足で悪名高い香港では、それが手の届かない夢であることも珍しくない。写真は香港青年連会が運営する施設「ビーリビング・ユース・ハブ」。3月撮影(2023年 ロイター/Lam Yik)

「ヤングアダルト」と呼ばれる世代にとって、実家を離れることは1つの通過儀礼だ。だが、慢性的な住宅不足で悪名高い香港では、それが手の届かない夢であることも珍しくない。

両親との口げんかにうんざりしていたヘアスタイリスト助手のシルバー・ホーさん(26)は、自分は運に恵まれた1人だと考えている。2カ月前、ホーさんは新たに設けられた「ユースホステル」に1室を得た。ヤングアダルト世代に居室を提供する施設で、香港政府からの補助金を受け、最長5年間借りることができる。

 
 

ホーさんの部屋は、22平方メートルのツインベッドルーム。もう1人とシェアする予定だが、両親と共に暮らしていた公営住宅の部屋に比べてわずかに狭いだけだ。

ホーさんが払う家賃はたったの月4400香港ドル(約7万9000円)で、近隣のサブディバイデッド・フラット(1つのアパートをさらに狭い部屋に分割した物件)と比べて27%も安い。そうした物件のパーティションで仕切られた部屋は、専用のトイレもなく、ベッド1つ置くのが精一杯という狭さであることが多い。

中国の習近平国家主席からのプレッシャーを受けて昨年強化された「ユースホステル」制度には、住宅問題を巡る若年世代の不満に対応する狙いがある。中国政府は、こうした不満が、2019年に香港を揺るがせた民主派による反政府抗議行動を招いた1つの要因だったと考えている。

また、政府が「責任ある善良な市民」を育て、自己鍛錬の機会を与えるという狙いもある。

応募にあたっては、31歳以下、月収2万5000香港ドル以下、そして資産総額が38万香港ドル以下、という条件があり、面接を受ける必要がある。さらに、入居を続けるためには、地域サービスまたは認定された活動に年200時間従事することが求められる。

ホーさんの場合、ホステル「ビーリビング」に部屋を確保したことは、両親からの独立と同時に、通勤時間の短縮を意味している。このホステルは新たな制度の下、ホテルから改装された初めてのもので、別の3カ所のホステルとは異なり、銅鑼湾(コーズウェイベイ)のにぎやかな商業地区という便利な立地である。

「以前よりもサロンに長くとどまって、新たなスキルを学んで練習する時間が増えた。これで昇進するチャンスも高まる」とホーさんは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中