最新記事
ウクライナ情勢

NATO首脳会議、ウクライナの将来的な加盟を確認 米、独の慎重姿勢で時期打ち出さず、ゼレンスキーは不満表明

2023年7月12日(水)09時05分
ロイター
NATOのストルテンベルグ事務総長

リトアニアの首都ビリニュスで開かれているNATO首脳会議は、ウクライナの将来的な加盟を再確認したが、直ちにNATOに招待することは見送った。ウクライナのゼレンスキー大統領は失望感をあらわにした。写真はNATOのストルテンベルグ事務総長。ビリニュスで10日撮影(2023年 ロイター/Yves Herman)

リトアニアの首都ビリニュスで開かれている北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は11日、ウクライナの将来的な加盟を再確認したが、直ちにNATOに招待することは見送った。ウクライナのゼレンスキー大統領は失望感をあらわにした。

首脳は宣言文で「ウクライナの未来はNATOにある」と表明した一方で、加盟の時間軸は示さなかった。「同盟国が同意し条件が整えば、NATOはウクライナの加盟を招待することができるようになる」としたが、具体的な条件は盛り込まなかった。

ただ、ウクライナに対しては加盟行動計画(MAP)を履行する要件を排除し、加盟に向けたハードルを事実上取り除いた。

ゼレンスキー氏は首脳会議のゲストとしてビリニュスに到着するのに先立ち、「加盟招待あるいは加盟自体の時間軸が設定されないのは前代未聞でばかげている」と述べてけん制していた。

同氏は11日、ビリニュスに集まった数千人の人々に対し、「NATOはウクライナをより安全にし、ウクライナはNATOをより強くする」と訴えた。

「私は決断、パートナー国、強いNATOを信じてここに来た。信念が確信になることを望む」と語り、NATO加盟招待がなかったことに失望を表明した。

立場の違い

NATO首脳の宣言文は、ウクライナ加盟の期限設定や招待に関する加盟31カ国の立場の違いを浮き彫りにした。

東欧諸国はロシアを抑止するためにはウクライナをNATOに迎えることが最善策だとしてウクライナの加盟要請を支持しているが、米国やドイツなどはNATOがロシアとの直接衝突に引きずり込まれる事態を恐れ、慎重な立場を取っている。

宣言文は「ウクライナ政府・国民による国家、国土、われわれと共通する価値観の英雄的防衛において、われわれの揺るぎない結束を再確認する」とし、ロシアが「NATOの安全保障、欧州大西洋地域の平和と安定に対する最も重大かつ直接的な脅威」と指摘した。

ゼレンスキー大統領の批判について、NATOのストルテンベルグ事務総長は「加盟への道筋を示す政治的メッセージとNATO同盟国からの具体的支援という点で、NATOからこれほど強いメッセージが発せられたことはかつてない」と釈明した。

一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は11日、ウクライナのNATO加盟は「潜在的に欧州の安全保障にとって非常に危険だ。決断を下す者はこのことを認識する必要がある」と述べてけん制した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・序盤=反落、米中貿易戦争巡る懸念で 

ビジネス

日本の経済成長率予測を上げ、段階的な日銀利上げ見込

ビジネス

今年のユーロ圏成長率予想、1.2%に上方修正 財政

ビジネス

IMF、25年の英成長見通し上方修正、インフレ予測
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 8
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中