最新記事
ロシア情勢

プーチンは「手負いのけもの」、極めて危険(元米情報将校)

Putin May Feel 'Need to Reassert Authority,' Warns Ex U.S. Intel Officer

2023年6月26日(月)14時43分
アレックス・フィリップス

プリゴジンの反乱を受けて緊急演説に追い込まれたプーチン(6月24日)。今はプーチンもプリゴジンもどこにいるかわからない Kremlin.ru/REUTERS

<プリゴジンの反乱は未遂に終わったが、モスクワのすぐ近くまで攻め上られたプーチンの権威はボロボロだ>

民間軍事会社ワグネルが24日に起こした反乱を受けて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「権威を立て直す必要性に強く迫られる」ことになるだろうと、元米海兵隊の情報将校ハル・ケンファーは述べた。

現在はグローバル・リスク・インテリジェンス・アンド・プランニング社のCEOを務めるケンファーはアメリカのニュース専門テレビ局ニューズネーションの取材に対し、プーチンは権力を掌握しようとするあまり「非常に危険な」存在になるかも知れないと指摘した。

次に表れたときのプーチンは危険と警告するケンファー


ワグネルの部隊は24日、ほんの数時間のうちにロシア南部ロストフ州の軍事施設を支配下に収め、その後、モスクワに向けて北上を開始した。ロシア軍はあわてて首都の防衛体制を敷いた。ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンは23日、ロシア軍がウクライナに駐留しているワグネルを攻撃し、ワグネルの戦闘員が死亡したとされる事件を受け、ロシア国防省に真っ向から反旗を翻した。

専門家は今回の反乱をプーチンの権威に対する公然の攻撃と見ている。ウクライナにおけるロシアの軍事的失敗をめぐってプーチンが直接攻撃されたのもこれが初めてだ。

主導権を持つのは誰かを示したい

ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の仲介により、プリゴジンは反乱の罪を問われない代わりに自身はロシアを離れ、ワグネルの部隊はウクライナ国内の拠点に戻すことに同意した。

今のところ反乱は不発に終わったように思えるが、ロシアの軍事的統制の弱さや、軍上層部とワグネルの間の緊張の高まりを白日の下にさらす出来事でもあった。

「(プリゴジンは)いくつかの都市を制圧した」とケンファーは述べた。「ロストフ州にある(ロシア)南部地方の司令部は、制圧する意味が十分にある場所だ。ウクライナの軍事作戦にとって重要な司令部だからだ」

今回の反乱で、面子を潰された形のプーチンがワグネルとの軍事衝突に突き進むのではと考えた人もいるが、実際に選んだのはプリゴジンとの和解だった。だがケンファーのように、暴力的な対応に打って出るのはこれからだと考える人もいる。

「モスクワに戻ってきたら、(プーチンは)権威を立て直す必要性を、少なくとも主導権を握っているのは自分だという印象を立て直す必要性を強く感じるだろう。それは非常に危険な事態を招くかも知れない」とケンファーは述べた。「手負いのけものは危険なものだ。プーチンは(失った権威を)何かで埋め合わせなければと思うかも知れない」

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

イスラエルがシリア攻撃、少数派保護理由に 首都近郊

ワールド

学生が米テキサス大学と州知事を提訴、ガザ抗議デモ巡

ワールド

豪住宅価格、4月は過去最高 関税リスクで販売は減少
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中