最新記事
ロシア

「ウクライナは既にロシアの防衛戦を突破した」──プリゴジン

Ukraine offensive has "broken through" Russian lines: Prigozhin

2023年6月8日(木)20時00分
デービッド・ブレナン

ワグネル創設者でプーチンにも重用されてきたプリゴジン(4月8日、モスクワ) Yulia Morozova-REUTERS

<ワグネル創設者は、ウクライナ軍は複数地点でロシアの防衛線を突破したと警告、ロシア軍に20万人の兵を要求した>

【動画】ロシアの「竜の歯」、ウクライナ「反転攻勢」を阻止できず...チャレンジャー2戦車があっさり突破する映像を公開

ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者であるエフゲニー・プリゴジンは、ウクライナ軍が反転攻勢を始め、ロシア軍の防衛戦を破って東部ドネツク州のバフムトに拠点を作ったと伝えられると、20万人の兵をワグネルに送れとロシア軍に要求した。

ロシア軍の幹部をたびたび批判してきたプリゴジンは、6月6日にメッセージアプリ「テレグラム」の自身の公式チャンネルに動画を投稿。この中で、ウクライナ軍の反転攻勢を阻止できるのは、ワグネルの部隊だけだと主張した。

モスクワ・タイムズ紙が引用して報じたところによれば、プリゴジンは動画の中で「20万人の人員が必要だ」と述べてこう続けた。「ルハンスク(ルガンスク)とドネツクの前線に対応するには20万人超の人員が必要だ。我々の準備は整っている」

プリゴジンは、ロシア軍がワグネルに弾薬を供給しない、という批判を繰り返し、5月末にはロシア正規軍と交代するためバフムトから部隊の撤収を始めていた。ロシアの刑務所から大勢の受刑者を動員して戦地に投入してきたワグネルだが、バフムトでの激戦でかなりの戦闘員を失ったとみられている。

プーチンに総動員令の発出を要請

さらにプリゴジンは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して、総動員令を発して兵力を増やすよう促した。ただし3カ月をかけて適切な訓練を行わなければ、新たな部隊は「大砲の餌食」になるだけだろうとつけ加えた。ワグネル自身がバフムトで、こうした「使い捨て兵士」に頼る戦術を取ってきたと報じられている。

ウクライナ軍は複数の地域で「既に(ロシア軍の)防衛線を突破している」と彼は指摘し、さらにこう続けた。

「バフムト近郊の3つの地点が問題だ。トレツクには大勢のウクライナ兵が押し寄せており、近いうちにクルディユムフカとオザリアナフカにも進軍を始めるだろう。(ロシア西部でウクライナと国境を接する)ベルゴロド州はぎりぎり持ちこたえている状態だ。ザポリージャでは最も重要な拠点を失った。今後はドネツク地方の北部と南部への攻撃が予想され、時間的な余裕はない。軍用機では事態を収拾することはできないだろう」

こう述べたプリゴジンは、改めてロシア国防省を批判した。「ロシア軍はきちんとした運営が行われておらず、計画も準備も、互いに対する敬意もない」「上層部がかんしゃくを起こしているだけだ。我々は今後、重大な損失に直面することになると確信している。確実に、領土の一部を失うことになるだろう」

日本企業
タイミーが仕掛ける「一次産業革命」とは? 農家の「攻めの経営」を後押しするスキマバイトの可能性
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ウェイモ、来年自動運転タクシーをラスベガスなど3

ビジネス

欧州の銀行、米ドル資金に対する依存度高まる=EBA

ワールド

トランプ氏、NY市長選でクオモ氏支持訴え マムダニ

ワールド

ウクライナ、武器輸出・共同生産拠点を独とデンマーク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中