最新記事
兵器

ロシアの「竜の歯」、ウクライナ「反転攻勢」を阻止できず...チャレンジャー2戦車があっさり突破する映像を公開

Video Shows Challenger 2 Tanks Making Light Work of Russia's 'Dragon Teeth'

2023年6月2日(金)18時21分
ジュリア・カルボナーロ
チャレンジャー2戦車とウクライナ兵

イギリスで訓練を受けるウクライナ兵、チャレンジャー2の上で記念撮影(2023年2月) Toby Melville-Reuters

<間近に迫っているとも言われるウクライナによる反転攻勢に備え、ロシア軍は占領地域に防御用障害物「竜の歯」などを設置している>

ロシア軍は、ウクライナ国内の占領地域に戦車などの進軍を食い止めるための防御用障害物「竜の歯」を設置している。だが近いうちにウクライナが反転攻勢に打って出ると言われる今、その障害物も実際にはほとんど効果がないかもしれない。ツイッターには、ウクライナ軍の戦車が「竜の歯」をやすやすと突破する様子を捉えた動画が投稿されている。

■【動画】ロシアの「竜の歯」をウクライナ軍のチャレンジャー2戦車があっさり突破する様子

ウクライナが保有するチャレンジャー2は、イギリス軍が「チャレンジャー1」の後継として1994年から導入した主力戦車。その主な目的は、敵の戦車を破壊することだ。

ウクライナ国防省は5月23日にツイッター上で、ウクライナ国内の非公開の場所でチャレンジャー2が「竜の歯」を押しのけながら前進する様子を捉えた動画を共有した。コメントには、「これがチャレンジャー2戦車だ。『竜の歯』なるものがあるならば、『竜の歯医者』だっているはずだ」と書き添えている。

動画の中でチャレンジャー2は、AC/DCの曲「地獄のハイウェイ」のリズムに乗りながら幾つかの「竜の歯」を取り除き、それを数メートル先まで引きずっていっている。

「竜の歯」とは、鉄筋コンクリート製でピラミッドのような形をした防御用障害物。第二次大戦以降、戦車や機械化歩兵旅団の進軍を阻止するために使われてきた。地面から巨大な歯が突き出しているように見えるため、「竜の歯」と名付けられた。

反転攻勢に備えて「竜の歯」を設置か

ウクライナの戦闘地帯で最近撮影された衛星写真によれば、ロシア軍はウクライナへの侵攻開始以降、占領した複数の地域にこの「竜の歯」を設置してきた。間近に迫っていると噂される、ウクライナ軍による反転攻勢に備えた動きだ。

アメリカの衛星企業「カペラスペース」が撮影し、4月末にロイターによって共有された航空画像には、ロシア軍がロシア西部からウクライナ東部、さらにはクリミアに至るまでの各所に、対戦車壕など防御設備に加えて「竜の歯」を設置した様子が示されている。

だがウクライナ側は、ツイッターにこの「竜の歯」をあざ笑う動画を投稿するなど、防御を強化するロシア軍を前にしても挑戦的な姿勢を崩していない。

イギリスのリシ・スナク首相は1月に、14両のチャレンジャー2をウクライナに供与すると約束。戦車供与に伴い、イギリス国内でウクライナ軍への訓練も行った。3月後半にウクライナに到着したとされているチャレンジャー2は、ウクライナが準備を進めているとされる反転攻勢に使われる見通しだ。

ウクライナ国防省情報総局のキリーロ・ブダノフ局長は、先日NHKとのインタビューの中で、反転攻勢は「まもなく始まる」と述べ、さらにこう続けていた。「最小限の兵器やその他の設備は揃っている。まもなく始まるということだけは言える」


先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

モデルナ、日本でのmRNA工場建設中止 「ビジネス

ビジネス

トランプ氏、パウエルFRB議長非難で理事会も批判 

ワールド

対ロ和平交渉に「さらなる勢い」必要=ゼレンスキー氏

ビジネス

中国、25年レアアース生産枠を公式発表なく各社に通
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 5
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 6
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中