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ミサイル

「極超音速」キンジャールはウソ、プーチンは開発者に騙された?──ロシア元対外情報庁長官

Kinzhal missile makers "deceived" Putin, says Ukrainian ex-intel chief

2023年5月23日(火)17時33分
エリー・クック

キンジャールを装備したミグ31戦闘機(2022年、対独戦勝記念軍事パレードのリハーサルで) Maxim Shemetov-REUTERS

<「無敵」のはずのキンジャールがウクライナの防空システムに撃ち落とされて、開発した科学者たちは国家反逆罪容疑で逮捕されたという>

ロシアの極超音速空対地ミサイル「キンジャール」の開発者たちは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「欺いた」――ウクライナの元対外情報庁長官がこう指摘した。

2010年まで同長官を務めていたミコラ・マロムシュは、ウクライナのメディアに対し、開発者たちはキンジャールを「高性能兵器」と謳っていたが、実際にはそれほどの性能は発揮できなかったと述べた。キンジャールの性能については、西側のアナリストからも疑問の声が上がっている。

ロシア大統領府は5月に入って、キンジャールの開発に携わった科学者3人が「きわめて重大な罪に問われている」と発表した。だが当時は、それ以上の情報を明らかにしていなかった。

問題の科学者はアナトリー・マスロフ、アレクサンデル・シプリュクとバレリー・ズベギンツェフだ。「航空力学分野における傑出した科学者」3人の逮捕を受け、ロシア科学アカデミー・シベリア支部の理論応用力学研究所の研究者たちは、インターネットに抗議の公開書簡を発表した。

この公開書簡によれば、3人は国家反逆罪の容疑で逮捕されたという。ロシア国営メディアは、シプリュクは2022年8月に逮捕され、マスロフは昨年6月にロシア当局に身柄を拘束されたと報じた。ズベギンツェフについてはこれまで報じられていなかったが、ロイター通信は地元メディアを引用する形で、4月7日に逮捕されたと報じた。

撃墜された「無敵のミサイル」

これとは別に、同じくシベリアにあるノボシビルスク国立大学のロシア人物理学者、ドミトリー・コルケルが2022年夏に国家反逆罪で逮捕されている。末期がんで入院中だったコルケルは、ロシア連邦保安庁(FSB)によって病院から拘置所に移送され、死亡したという。

理論応用力学研究所の職員らは公開書簡の中で、「科学界全体が衝撃を受け、憤りを感じている」と表明した。

プーチンは極超音速ミサイルシステム「キンジャール」は「無敵」のミサイルだと豪語してきた。NATOの「キルジョイ」というコードネームでも知られる同ミサイルについてロシアは、音速の10倍まで加速可能で射程距離は2000キロ超だとしている。だが西側の専門家からはキンジャールの性能や「極超音速」であることを疑問視する声が上がっていた。

ウクライナ軍は5月16日、夜間に首都キーウを襲った「キンジャール」6発を撃墜したと発表。これより前には、米国製の地対空ミサイルシステム「パトリオット」でキンジャールを迎撃することに成功したとも述べていた(ロシア側は否定)。

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ウクライナ情勢

ロシア国境地帯のパルチザン攻撃はウクライナ反転攻勢の準備?

Explosions in Belgorod As Russia Faces 'Multi Domain Security Threat'

2023年5月24日(水)17時58分
ブレンダン・コール

ウクライナ国旗の色を身につけ、ロシア国内でポーズする武装組織(5月23日、ベルゴロド州コズニカ) Russian Volunteer Corps/REUTERS

<ウクライナ政府はパルチザン攻撃への直接的な関与を否定しているが、軍事専門家は、それはウクライナの反転攻勢計画と「連携」していると言う>

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アメリカ政治

「トランプがプーチンにすり寄るのはとうてい支持できない」 共和党支持のウクライナ系米国人、大統領選で苦渋の選択へ

2023年5月24日(水)12時45分
オープンサイドを並べたテーブルを囲むウクライナ系米国人ジョージ・ストーニチジさん

ジョージ・ストーニチジさん(写真)は、2回の大統領選挙でトランプ前大統領に投票した。今も国内政策ではトランプ氏が最高だと評価している。だが、2024年の大統領選挙でトランプ氏が共和党候補としての指名を獲得し、バイデン現大統領と争うのであれば、ストーニチジさんは票を投じないつもりだ。ペンシルベニア州リーハイトンで4月25日撮影(2023年 ロイター/Gram Slattery)

ジョージ・ストーニチジさんは、2回の大統領選挙でトランプ前大統領に投票した。今も国内政策ではトランプ氏が最高だと評価している。だが、2024年の大統領選挙でトランプ氏が共和党候補としての指名を獲得し、バイデン現大統領と争うのであれば、ストーニチジさんは票を投じないつもりだ。

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ウクライナ情勢

ロシア、ウクライナから侵入した工作員撃退 「70人超の民族主義者を殺害、4台の装甲車を破壊」

2023年5月24日(水)09時42分
ロシア西部ベルゴロド州での戦闘の様子

ロシア当局は23日、ウクライナと国境を接する西部ベルゴロド州にウクライナ側から侵入してきたとする戦闘員の集団を、2日間にわたる戦闘の末に撃退したと発表した。提供画像(2023年 ロイター)

ロシア当局は23日、ウクライナと国境を接する西部ベルゴロド州にウクライナ側から侵入してきたとする戦闘員の集団を、2日間にわたる戦闘の末に撃退したと発表した。こうした戦闘はロシアによるウクライナ全面侵攻開始以降で最大規模だったとみられている。

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戦闘機

F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官

Russia Will Be 'Nervous' Over F-16s for Two Reasons: Retired Air Marshal

2023年5月23日(火)19時21分
エリー・クック

F-16は戦いの土俵そのものを変えてしまう? TV5MONDE/YouTube

<F-16戦闘機に最先端兵器がついてくるだろうことはもちろん、F-16が将来配備されるだろうと思うだけでこれまでのロシアの軍事計画すべてが狂い、それがロシアを削って敗北させる>

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ロシア

ロシア西部州、反体制派が内務省や連邦保安局を攻撃か 知事「ウクライナの破壊工作集団」

2023年5月23日(火)12時04分
ロシア国旗と兵士

ウクライナ国境に近いロシア西部ベルゴロド州のグラトコフ知事は22日、ウクライナの「破壊工作集団」がロシア領内に侵入したが、ロシア軍がこれを退けているとした。2022年8月撮影(2023年 ロイター/Alexander Ermochenko)

ロシア西部ベルゴロド州のグラトコフ知事は22日、ウクライナの「破壊工作集団」がロシア領内となる国境の地区グライボロンに侵入したが、ロシア軍がこれを退けているとした。

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