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英王室

カミラ妃の王冠から特大ダイヤが外されたことに、「触れてほしくない」理由とは?

THE CROWN JEWEL

2023年5月10日(水)17時53分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)

残虐な支配と搾取の象徴

コーイヌーアの由来については相矛盾する説があるが、専門家の意見が一致していることもいくつかある。世界で最大級の、最も価値の高い宝石の1つであること。中世のインドで発見されたこと。当時のインドはイスラム教のデリー・スルタン王朝の統治下にあったことなどだ。

その後、コーイヌーアはムガール帝国、ペルシャ帝国、シク王国など、この地域を征服した支配者たちに引き継がれ、19世紀半ばまでに、英王室のものとなった。

初めて王冠に使用されたのは、エドワード7世に嫁いだアレクサンドラ王妃の戴冠時(1902年)とされ、それが次男(ジョージ5世)の妻となったメアリー王妃に引き継がれた。さらにメアリーの次男ジョージ6世の妻であるエリザベス王太后に引き継がれた。

昨年死去したエリザベス女王が1953年に戴冠したとき、母親であるエリザベス王太后はコーイヌーアの入った王冠を着けている。この頃には世界は大きく変わっており、イギリスはインド(とパキスタン)の独立を認めたばかりだった。

エリザベスは善良な王室を演出することで、イギリスの残虐な植民地支配の記憶を取り繕うとともに、旧植民地のさらなる離反を防ごうと努力した。だが、彼女と王室そのものが、イギリスが世界で働いてきた搾取の象徴であることは歴然としている。

きらびやかな宮殿や王冠は、その証拠だ。第2次大戦後、イギリスは多くの植民地の統治権を地元住民に返還してきたが、そこで奪った多くの宝物は返還していない。

この問題は、昨年のエリザベスの死後、世界的な議論を巻き起こしてきた。もちろんそこには、金銭的な要因も絡んでいる。これらの宝石にはとてつもない価値がある。独立を果たしたものの、経済開発が遅れている国々にとって、これらの宝石の返還には大きな意味がある。

だが、何より重要なのは、象徴としての意味合いだ。大英帝国はもう存在しないのに、その象徴である王室が、かつて臣下だった国々から強奪した宝石で着飾り、「伝統を守り続ける」というのはおかしくないだろうか。

カミラの王冠からコーイヌーアを取り外しても、この問題を消し去ることはできない。コーイヌーアがあった場所には、3つのカリナンダイヤモンドがはめ込まれた。それらは20世紀初めに、イギリスの植民地だった南アフリカの鉱山で発見されたものだ。

南アフリカが今、このダイヤモンドを返してほしいと言い出したとしても全くおかしくないのだ。

©2023 The Slate Group

野生生物

預け荷物からヘビ22匹と1匹の...旅客、到着先の空港でバレる...現場は騒然

2023年5月10日(水)18時20分
飯野敬二
ヘビ

(写真はイメージです) Kurit afshen-Shutterstock

<税関ではすべての生物を押収...>

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野生生物

【動画】預け荷物からヘビ22匹と1匹の...旅客、空港でバレる...現場は騒然

2023年5月10日(水)17時50分
ヘビ

(写真はイメージです) Herticet-Shutterstock

<旅行に慣れていなければ、手荷物に何を入れてはいけないのか、判断に迷うこともあるだろう。とはいえ、誰がどう考えても「NG」なものもある。インドの空港では、なんと、預け荷物から23匹の爬虫類が発見された。その動画がツイッターに投稿され、大きな注目を集めている>

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イギリス

「聖界正義の剣」「鳩の王笏」...謎のアイテム続出の戴冠式、英国人にも意味不明だった

CROWN MADNESS

2023年5月9日(火)18時06分
イモジェン・ウェストナイツ(ロンドン在住ジャーナリスト)
チャールズ3世の戴冠式

本番と同じ衣装を着けて行われたリハーサルには、実際の式典でチャールズが乗る「ゴールド・ステート・コーチ」も登場(5月3日) HENRY NICHOLLSーREUTERS

<聖エドワードの王冠をかぶった国王陛下に忠誠を──イギリス人にも意味不明で時代錯誤な式典の意味>

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英王室

いまだにチャールズ国王夫妻を許せないダイアナ派の恨み

Princess Diana fans voice fury ahead of King Charles' coronation

2023年5月9日(火)17時36分
ジャック・ロイストン

王室メンバーのパレードを待つ観衆の一人が掲げたダイアナの旗 SEBASTIEN BOZON/REUTERS

<死去から26年が経っても消えないチャールズの裏切りとカミラ「王妃」への反発>

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中国

中国、インドにらみパキスタンと軍事協力拡大へ 海外基地設ける可能性も

2023年5月8日(月)18時20分
天安門広場に掲げられたパキスタンと中国の国旗

中国の李尚福国防相は、パキスタンのニアジ海軍参謀長と北京で会談し、地域の安全保障における両国の能力を強化するために両国軍は「新たな分野に協力を拡大する」べきと訴えた。写真は2019年、北京の天安門広場に掲げられたパキスタンと中国の国旗(2023年 ロイター)

中国の李尚福国防相は8日、パキスタンのニアジ海軍参謀長と北京で会談し、地域の安全保障における両国の能力を強化するために両国軍は「新たな分野に協力を拡大する」べきと訴えた。

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