最新記事
中国

200人以上のアメリカ人も不当拘束、中国政府が標的にしているのは誰か?

‘PRAYING FOR A MIRACLE’

2023年3月30日(木)17時56分
ジョン・フェン(本誌記者)
中国

MYKHAILO POLENOKーEYEEM/GETTY IMAGES

<「刑務所で歯を5本失った...」自国民だけでなく、他国民も不当に拘束する中国。透明性を欠いた刑事司法制度に翻弄されたまま、月日だけが過ぎていく>

中国で何年も捕らわれの身になっているアメリカ国民とその家族の希望は、またしても打ち砕かれた。

きっかけは、アメリカ本土の上空で中国の偵察気球が確認されたことだった。この問題を受けて、米政府は、2月上旬に予定されていたアントニー・ブリンケン国務長官の中国訪問と中国側高官との会談を無期限に延期せざるを得なくなった。家族が中国で自由を奪われている人たちは、ブリンケンの訪中が問題解決につながることを期待していた。

中国で不当に拘束されているアメリカ国民は200人を上回るが、正確な人数は分からないと、中国でリスクにさらされているアメリカ人被拘束者の処遇改善に取り組むサンフランシスコの人権団体「対話財団」の創設者ジョン・カムは説明する。

中国の刑務所や収容所で拘束されていたり、自宅軟禁状態にあったり、出国を禁じられていたりするアメリカ国民は、中国の透明性を欠く刑事司法制度に翻弄されている。ほとんどの場合は、法律の専門家による支援を受けられず、祖国の家族と連絡を取る機会も大幅に制約されている。

「私に言わせれば、このように中国で抑圧的な扱いを受けているアメリカ国民は政治犯だ。投獄などの処遇は、アメリカと中国の政治的関係が悪いことと関係があるのだから」と、カムは本誌に語っている。

こうした人たちが中国でかけられている嫌疑は全く妥当性を欠くと、家族は主張する。

ニューヨーク州ロングアイランドの実業家カイ・リー(60)は、2016年に上海を訪ねたときに逮捕された。その後、家族と連絡を取れない状態になり、18年に非公開の裁判でスパイ罪により10年の刑を言い渡された。しかし弁護士によれば、リーのスパイ罪で問題にされた「国家機密」は、ネット上で自由にアクセスできるものだという。

米国務省は、リーを中国当局により不当に拘束されているアメリカ国民の1人と考えている。「つまり、父に対する刑事告発が政治的動機によるものだったと、アメリカ政府も判断しているということだ」と、リーの息子ハリソン(25)は本誌に語っている。

収監されているリーがアメリカの家族と連絡を取れる機会は、月1度のわずか数分間の電話だけだ。しかも、新型コロナのパンデミックが始まると、刑務所は服役者との面会を停止した。そのため、リーの現在の状況を把握し、法的権利が保障されているかどうかを確認することが難しくなっている。

「この3年間、上海の米領事館職員が父と面会することは許されていない」と、ハリソンは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、パナマに「重い代償」警告 香港企業の契約無効

ビジネス

欧米でデータ分析・ソフトウエア株急落、アンソロピッ

ビジネス

米ドル、トランプ政権の関税政策で「魅力奪われる」=

ワールド

米・コロンビア首脳が初会談、緊張緩和に向け協力模索
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 10
    少子高齢化は国防の危機──社会保障を切り捨てるロシ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中