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ウクライナ情勢

犠牲になっても、今なおロシアを美化してすがる住民たち──言語、宗教、経済...ウクライナ東部の複雑な背景とは

LIVING UNDER SIEGE

2023年2月24日(金)18時44分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

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ナースチャと祖母ナージャ、父コースチャはリマンの地下室で避難生活を送る(1月12日) TAKASHI OZAKI

男性は、14年に武装蜂起した親ロシア派反政府組織「ドネツク人民共和国」と同じ主張を口にする。その後、ヤヌコビッチ大統領の評価をめぐり住民とバレラの議論はヒートアップしていった。

バレラは後にこう振り返った。

「彼らは、ヤヌコビッチの時代は今よりも良い生活ができたと言いました。それは当時1ドルが8フリブニャで、今は40フリブニャに跳ね上がったからなのですが。彼らは何かにつけソ連とロシアを美化するのです」

大国ロシアと国境を接するドンバス地方の住民たちは、激しい砲撃の犠牲になってもなお、強き者にすがっていれば救われるという思いが色濃いようだ。ウクライナ政府の避難指示を受け入れず、ここに残っている彼らの存在が、街に展開するウクライナ兵の士気に微妙な影響を与えているのは間違いなさそうだ。

宗教者も武器を取るべきか

ロシア軍による壊滅作戦で「故郷が巨大な墓場になった」と語るマリウポリのゲナディー牧師。彼は募金を集め、前線の部隊に車100台を届けるキャンペーンを続けている。今回、73台目の車がバフムート方面軍の兵舎に届けられた。

一進一退を続ける部隊が寝泊まりするのは、住民から借り上げた一般の住居が多い。1月11日に訪ねた民家でも、数人の兵士がリビングのソファーで自動小銃を調整していた。その中に腫れ上がった左手を上げたままにしている兵士がいた。

「何があったんだ?」と尋ねるゲナディー。クリミア出身のウクライナ兵、アリ(42)が答える。「12月、バフムートで戦闘中にやられたんだ。とても危険な状況だった」

ロシア兵の姿が見える距離での接近戦。何人かの相手を仕留めた後、アリは30口径の弾を受けた。もし彼の手に当たっていなければ、そばにいた仲間の頭を直撃していたという。

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