最新記事

英王室

ヘンリー&メーガン「王室批判ビジネス」ついに限界? 米国民にも「飽き」の気配が

His Side of the Story

2023年1月14日(土)13時08分
ジャック・ロイストン
ヘンリー王子の自伝『スペア』

『スペア』の宣伝ポスター(ロンドン、1月9日) Peter Nicholls-Reuters

<公務を捨てて英王室ネタで稼ぎまくるヘンリー&メーガン夫妻だが、家族の話を商売にできるのも自伝『スペア』出版が最後か>

1月10日、英王室を離脱したヘンリー王子(サセックス公爵)の暴露的な自伝『スペア』が発売された。自分はしょせん王位継承の「スペア(予備)」だったという自虐的なタイトルだ。

もちろん飛ぶように売れたが、スペインで「間違って」先行発売され、その内容が詳しく報じられたせいで、王子の好感度は奈落の底へ落ちた。まあ、自業自得だろう。

かつてのヘンリーは人気者だった。優等生の兄ウィリアムと違い、ヘンリーはいたずらっ子でちゃめっ気もあった。

アメリカ人で黒人の血を引くメーガン・マークルと婚約した時点(2017年末)で、英国内での彼の好感度は81%。エリザベス女王や兄ウィリアムに負けない数字だった。

メーガン妃に対する大衆紙のネガティブな報道に苦言を呈した19年にも、イギリスの世論調査機関ユーガブの調べで、彼は72%の好感度を維持していた。ただしメーガン妃が「好き」は54%、「嫌い」は34%で、フィリップ殿下(女王の夫)や父チャールズ(現国王)といい勝負だった(それでも現王妃のカミラよりは常に上だった)。

公務を離脱すると2人の人気は急落したが、それでもヘンリーを「好き」な人は「嫌い」な人より多かった。20年にはアメリカで新生活をスタートさせ、「芸能人」としてメディアと契約し、莫大な金を稼ぐことになった。

しかし21年3月、アメリカの著名司会者オプラ・ウィンフリーによるインタビュー特番が放送されると、英国内ではヘンリーを「嫌い」な人が「好き」な人よりも多くなった。放送の直前までは「好き」が53%、「嫌い」が41%だったが、逆転した。以後、再逆転はほぼ起きていない。

ユーガブの月次調査で見ると、21年8月段階では「好き」が34%で、「嫌い」が59%だった。そして『スペア』発売直前(1月6日)の好感度は26%にまで落ちていた。

「チェスの駒」を殺したとの暴言も

ちなみにアメリカでは、まだヘンリーもメーガンも一定の人気を維持している。ただしケイト・ミドルトン(皇太子妃キャサリン)の好感度には遠く及ばない。

つまり、メーガンとヘンリーは英王室に関する爆弾発言で世界中の注目を浴び、おかげでネットフリックスやスポティファイとの巨額の契約を結べたが、ヘンリーの母国イギリスでは見捨てられた。新天地のアメリカでも、これ以上の人気上昇は見込めない。

実際、アメリカのメディアも同じ話の繰り返しに飽きてきた。王室批判の蒸し返しが商売になるのは『スペア』が最後だとの見方もある。

この本はオーディオ版で聴くと、約15時間かかる。これだけ延々としゃべっても、過去の発言で残された疑問は解消されていない。兄や父の悪口はいくらでも言えるが、突っ込みすぎれば名誉毀損で訴えられ、自分の居場所がなくなるからだ。

一方で、アフガニスタンで軍務中に25人の「チェスの駒」を殺したとの新たな暴言も飛び出した。38歳のヘンリーが400ページ超の回顧録を著した度胸には敬服するが、人気回復につながるとは思えない。残念だ。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部オデーサに無人機攻撃、2人死亡・15

ビジネス

見通し実現なら利上げ、不確実性高く2%実現の確度で

ワールド

米下院、カリフォルニア州の環境規制承認取り消し法案

ワールド

韓国大統領代行が辞任、大統領選出馬の見通し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中