最新記事

中国

中国はなぜ趙立堅を表舞台から引っ込めたのか

Why Did China Banish Its Chief ‘Wolf Warrior’?

2023年1月12日(木)17時42分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)

趙はナショナリストからの支持を得ていた一方で、中国のインターネット上では厳しく批判されていた。彼がお高くとまっていると不満を抱いていた者もおり、新型コロナウイルスの感染拡大により多くの国民が外出を厳しく制限されていた頃に、趙の妻が(中国版ツイッターとされる)微博にマスクをしていない自身の写真を投稿した時には大きな騒ぎになった。

また最近では中国の指導部の中に、「戦狼外交」が中国の国際的なイメージに悪影響を及ぼしていると考える者が出てきているようだ。中国が態度を改めようとしているのだと関係各国(とりわけアメリカ)に確信させるための取り組みも行われている。その一因は、アメリカが本気で(米中の経済を引き離す)デカップリングを仕掛けたことによる衝撃と、ゼロコロナ政策が中国経済にもたらした打撃にある。それを踏まえると、中国は今後、比較的穏健な人物を次期駐米大使に任命する可能性が高いだろう。

しかしながら、この外交的なシフトだけが原因で、趙が外務省報道官の座を追われたのかどうかは分かっていない。国外追放されたジャーナリストの王志安が先月指摘したように、趙は2022年11月にゼロコロナ政策に反対する抗議デモについての記者会見の中で言葉に詰まり、資料の紙をせわしなくめくり、しどろもどろの答えをした失態もあった。

欧州は騙せてもアメリカは無理

中国による強硬な外交スタイルの軌道修正が、実際の政策の変化のあらわれなのかどうかも不明だ。たとえば中国はウクライナ問題について、戦闘に否定的な考えを示唆しつつも、戦闘が始まった当初から基本的にロシア寄りの姿勢を変えていない。

中国が再び優れたビジネスパートナーとして戻ってきたと、それを切実に望んでいるヨーロッパ諸国を納得させることは簡単かもしれない。だがアメリカは中国を戦略上の大きな敵と考えているため、納得させるのは難しいだろう。それに中国の国内メディアは、反米姿勢を貫いている。中国の当局者たちは、アメリカの当局者が容易に中国のテレビを視聴し、中国の新聞を読むことができるのを忘れているようだ。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中