最新記事

ウクライナ侵攻

プーチンは再びキーウ陥落を狙う──ウクライナ議員

Ukrainian Politician Warns Putin Has 2 Paths to Victory

2023年1月18日(水)17時36分
アンドリュー・スタントン

戦争継続を訴えるプーチンの新年演説を流すモスクワの地下鉄(2022年12月31日) Shamil Zhumatov-REUTERS

<ウクライナ侵攻から間もなく11カ月、ウクライナ軍の激しい抵抗で目立った戦果も得られずにいるロシア軍だが、プーチンには少なくとも2つ、勝つ方法があるとチェルニウ議員は警告する>

ロシアのウクライナ侵攻が始まって11カ月の節目が近づく中、ウクライナの国会議員、イェホル・チェルニウが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領には、今後の戦略に関して2つの道があると発言した。

プーチンは2022年2月24日、電撃的勝利を収めようという目論見のもと、ウクライナで「特別軍事作戦」を開始した。しかし、西側の軍事支援を得たウクライナの国防力は、予想よりも強力だった。大勢を見ると、ロシア軍は何カ月にもわたって、はかばかしい戦果を得られない状態が続いている。

だがウクライナ国会議員のチェルニウは油断はできないと言う。この秋から冬にかけてはウクライナ側が戦局を優位に進めているものの、プーチンには今でも、勝利につながる可能性をもつ方法が少なくとも2つあると警告した。

「第1の選択肢は、首都への素早い攻撃によって完全な勝利をおさめ、ウクライナを降伏に追い込むというものだ。プーチンは、キーウに対して新たな攻撃作戦を仕掛けようとする可能性がある」とチェルニウは1月17日、ツイッターに投稿した。

東西を分断する

ロシア軍は開戦当初、ウクライナの首都キーウを攻略しようとしたが、陥落させることができず、退却を余儀なくされた。

それ以降、ロシアはいくつもの困難に直面してきた。兵員不足や経済制裁により、占領した領土をウクライナに奪還されてしまう状況だ。

チェルニウは第1のシナリオにおいて、ロシアがウクライナ西部における「複数の目標を攻撃する」おそれがあると警告した。その狙いは、ウクライナをヨーロッパのほとんどの地域と結びつけている輸送ルートを断ち切ることだ。このルートは、ロシアの侵攻が始まって以来、軍事および経済的支援の重要な供給源となってきた。

もっとも、米戦略国際問題研究所(CSIS)のセス・ジョーンズは17日、本誌の取材に対し、この戦略がプーチンにとって実行可能なものとなる可能性は低いとの見方を示した。

「話を聞く限り、これは2022年2月時点でのロシア側の戦略だったように思える」とジョーンズは述べた。「この時点で、ロシアはこの戦略を成功裏に実行することができなかった。彼らには、各軍の連携、士気、指揮統制、兵站が欠けていた。しかも、それ以降のロシア軍の行動を見る限り、これらの点が大幅に改善したと考えられる証拠はまったくない」

また衛星写真を見る限り、電撃戦でウクライナの領土を奪取する作戦の再実行に向けて、ロシア軍が兵力を増強している兆しは見当たらない点も指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前年比+2.3%に鈍化 前月比0.

ワールド

ウクライナ大統領、プーチン氏との直接会談主張 明言

ビジネス

ソフトバンクG、1―3月期純利益5171億円 通期

ビジネス

日産、再建へ国内外の7工場閉鎖 人員削減2万人に積
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 7
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 9
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中