最新記事

ワグネル

ワグネル拠点の攻撃に成功、傭兵の半数が死亡──ルハンシク州知事

Russian Mercenary Group's HQ Destroyed in Another Blow to Putin—Report

2022年12月12日(月)17時47分
トーマス・キカ

ワグネルはウクライナ侵攻を通じて陰から表に躍り出て、今やサンクトペテルブルグに堂々たる本社を構えている(11月4日) Igor Russak-REUTERS

<ロシアの悪名高い民間軍事会社がウクライナの攻撃で破壊され、傭兵の半数が死亡したと、ロシアが支配するルハンシク州の知事。プーチンにさらなる打撃を与えた>

12月11日にウクライナから発信された情報によると、ロシアの著名な傭兵集団の本部が攻撃によって壊滅的な被害を受けた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ侵攻によって窮地に陥っているが、この事件はさらなる打撃になりそうだ。

攻撃されたのは、ルハンシク州カディフカ市に本部を置く民間軍事会社ワグネル・グループ。この情報を発表したルハンシク州のセルヒイ・ハイダイ知事によると、ワグネルが拠点にしているホテルがウクライナ軍に攻撃され、グループに属する民間軍事請負業者(PMC)の被害は大きく、半数が死亡する見込みだという。

BBCの報道によると、ワグネルはロシア政府の命令で動く国家支援の傭兵組織であり、数々の戦争犯罪や虐待で告発されたことがある。ワグネル所属の傭兵は長年にわたり、クリミア、シリア、リビア、マリ、中央アフリカ共和国など内戦の渦中に派遣されている。

プーチンの側近で、ワグネルの責任者であるロシアのオリガルヒ、エフゲニー・プリゴジンは、攻撃の後、自分も息子のパベルはホテルにいなかったことを確認した。

本誌は独自に情報の詳細を確認することができなかったため、ロシア当局にコメントを求めた。

オデーサ周辺に猛攻

ウクライナの最東端に位置するルハンシク州は、ロシアと長い国境を接しており、ドネツク州とともにドンバス地域を構成している。ロシア政府は怪しげな証拠に基づいて、この地域でロシア民族が迫害されていると主張し、ウクライナ侵攻の根拠としてきた。

9月末にロシアはドンバス地域と他の2地域を正式に併合したが、国際的にはほとんど認められていない。

ここ数週間、ウクライナ戦争は激化している。オデーサなどの南部の都市はロシアのインフラ攻撃にさらされ、住民は冬の始まりの時期に、長時間にわたる停電を耐え忍ぶことになった。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日に声明を発表し、ロシア軍による夜間のインフラ攻撃のせいで、オデーサ周辺が停電し、住民およそ150万が影響を受けていると非難した。その一方で、攻撃に使用されたイラン製無人機の大半を撃墜したとも報告した。

「ロシアのテロリストはオデーサに対して、(イラン製の)シャヘド無人機を全部で15機を使用した」と、ゼレンスキーは説明した。「10日の夜、一挙に攻撃した。これがオデーサおよびその住民に対するロシアの真のやり口だ。住民に対する意図的ないじめであり、街に災いをもたらそうとする計画的な試みでもある。だがわが国の空の守り手は、ドローン15機のうち10機を撃墜することができた。よくやった!」

復旧の見通しについて、ゼレンスキーや他のウクライナ政府高官からの予測はまちまちだが、ロシアの攻撃が激しいため、この地域の電力網の修復には通常より時間がかかると一般に予想されている。

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中