最新記事

中国

文革で学習能力が欠如する習近平ら「一強」体制が、うかうかできない理由とは?

Finally, Red Guards Over China

2022年11月9日(水)13時37分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者、香港出身のコラムニスト)

221115p40_SKP_02.jpg

前国家主席の胡錦濤は党大会のひな壇から無理やり退席させられた KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

後に、この措置については蔡が会議で以下のような厳しい指示を出していたことが分かった。「最前線では本物の武器を使え、銃剣で血を流せ、武力を使え......あんな火災が二度と起きたら、おまえたち全員のクビが飛ぶぞ」

ひどく乱暴な話だが、驚いてはいけない。習近平は人民大会堂のひな壇で、前国家主席の胡錦濤に恥をかかせ、力ずくで退席させた。そんなことが許されるなら、蔡奇のしたことも許容範囲だ。

台湾侵攻を阻む勢力

習が10年前から使っているお気に入りのスローガンがある。「実幹興邦、空談誤国(地道な仕事が国を興し、空論は国を誤らせる)」だ。元は鄧小平が経済改革・開放の標語として使ったものだが、習はこれをねじ曲げ、「問答無用」の意味で使っている。

この強引な手法を、習近平は国外でも貫くつもりだろうか? 台湾の民主的政権も力ずくで追い落とそうとするだろうか? むろん、彼にためらいはない。党大会の政治報告でもそう言っている。

だが国内で政敵との壮絶な戦いを始めてしまった今、台湾攻めに乗り出せば内側から足を引っ張られる恐れがある。なにしろ共青団派や江沢民派にとって習近平を「台湾解放」の英雄に仕立ててしまうのは自らの墓穴を掘ることに等しい。

ただし、他国との外交関係は別だ。強引な「戦狼外交」を邪魔する者はいない。党大会の開催中にもイギリスで、ひどい事件が起きている。マンチェスターの中国総領事館職員が、香港の民主化を求める抗議デモ参加者の髪を引っ張って領事館の敷地内に連れ込み、まるで紅衛兵のようなやり方で殴打したのだ。

その一方、習と同じ1953年に生まれ、習と全く同じように文革の時代を生き抜き、「戦狼外交官」の代表と呼ばれる外相の王毅(ワン・イー)は、このたび晴れて政治局入りを果たした。つまり、マンチェスターで起きた醜悪な外交ドラマと北京での熾烈な政治ドラマは一本の糸で結ばれている。だから世界は覚悟すべきだ。この先も、中国では何が起きてもおかしくないと。


PSC_Yizheng_Lian_profi.jpg練乙錚(リアン・イーゼン)
YIZHENG LIAN
香港生まれ。米ミネソタ大学経済学博士。香港科学技術大学などで教え、1998年香港特別行政区政府の政策顧問に就任するが、民主化運動の支持を理由に解雇。経済紙「信報」編集長を経て2010年から日本に住む。

ニューズウィーク日本版 総力特集:ベネズエラ攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中