最新記事

北朝鮮

アメリカには北朝鮮のミサイルを迎撃できる自信がない

Can the U.S. stop a nuclear attack? North Korea tests were simulation

2022年11月8日(火)18時21分
ニック・モドワネック

ウィリアムズは、ロシアや中国が保有する核弾頭搭載可能なICBMに対するアメリカの戦略は「冷戦以降ずっと」核には核で報復するという脅しによる相互確証抑止であり、それは「今も変わっていない」。これを彼は「脆弱さの上の安定」と定義する。

北朝鮮に対するアメリカの態勢は、もっと防衛に重点を置いている。「我々は攻撃に対して報復するだけでなく、攻撃を阻止し、ダメージを最小限に抑えることができる」とウィリアムズは指摘する。

米国防総省は、核攻撃から米本土を守るための「地上配備型ミッドコース防衛システム(弾道ミサイル迎撃システム)」44基をカリフォルニアやアラスカなどの各州に配備している。

だが全米アジア研究所は2021年に発表した報告書で、アメリカはミサイル防衛に投資を続けているものの、「技術的な欠陥や(北朝鮮による発射)実験の記録の不確かさ、監視の不十分さ」から、北朝鮮による核攻撃から米本土を防衛する能力には「重大な疑念がある」と指摘した。

またウィリアムズは北朝鮮のミサイルについて、現在は技術的に高度なものではないものの、洗練されつつあると言う。

複数目標弾頭に対応できるか

4月にはマーク・ミリー米統合参謀本部議長も、核・弾道ミサイル計画を推し進める北朝鮮はアメリカや同盟諸国に「真の脅威」をもたらしていると発言した。ミリーは2017年には、もしも北朝鮮がアメリカを核兵器で攻撃すれば、アメリカは北朝鮮を「完全に破壊する」と述べていた人物だ。

米外交問題評議会の上級研究員(朝鮮半島担当)であるスコット・スナイダーは4日、北朝鮮は「この数週間で最も集中的なミサイル実験の期間に突入した」と指摘。彼は本誌に対して、北朝鮮の発射実験は短距離ミサイルの配備能力の強化に関連があり、その目的は戦術核の運用能力を強化することだと述べた。一部のアナリストは、北朝鮮は100を超える核兵器を製造するのに十分な材料を持っていると推定する。

スナイダーは、アメリカは北朝鮮からのミサイル1発を迎撃する能力については「幾らかの自信がある」ものの、金正恩が開発・獲得を目指している複数目標弾頭(1発のミサイルで核弾頭を複数の目標に投下できる)への対応となると、そこまでの自信はないと分析した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ「国際安定化部隊」、各国の作業なお進行中=トル

ビジネス

米ウェイモ、来年自動運転タクシーをラスベガスなど3

ビジネス

欧州の銀行、米ドル資金に対する依存度高まる=EBA

ワールド

トランプ氏、NY市長選でクオモ氏支持訴え マムダニ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中