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ゼレンスキーに「覚悟」が生まれた瞬間──プーチンとの「戦前対決」で起きていたこと

ROLE OF A LIFETIME

2022年10月21日(金)18時15分
セルヒー・ルデンコ(ジャーナリスト)

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東部ルハンスク州の主要都市リシチャンスクの光景。爆撃された学校 MARCUS YAMーLOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES

4カ国会談が終わるまでに、ロシアとウクライナの大統領がドンバス地方の将来について共通の立場を見いだすことはなかった。プーチンは容赦なかった。あくまでもミンスク合意のとおり、ORDLO(ドンバスで親ロシアの分離主義者が実効支配している地域)で地方選挙が行われた翌日以降に、再びウクライナが国境管理を担うと主張した。ゼレンスキーはこれに反発し、ペトロ・ポロシェンコ前大統領が受け入れた合意に不満を述べた。

しかし会談後に発表されたプレスリリースによれば、ORDLOに幅広い自治権を認める「特別な地位」の法的側面について全ての当事者が合意し、いわゆるシュタインマイヤー案を基に詳細なプロセスを詰めることになった。同案は、OSCE(欧州安全保障協力機構)の支援で地方選挙が行われてから、「特別な地位」を与える恒久法が発効するとしている。

4カ国会談の舞台裏で何が起きていたのか、確かなことはごく少数の関係者しか知らない。ウクライナのアルセン・アバコフ内相(当時)は、ゼレンスキーとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相のやりとりとされる内容を記者団に語った。

「ウォロディミル・ゼレンスキーは、大部分がロシア語で行われた会話の途中でついに爆発した。『ミスター・ラブロフ、分かったような顔をするのはやめてくれ! 私はあなたと違って、自分の足で国境沿いを全て歩いて回ったのだ』」

20年3月に予定されていた次の4カ国会談は、世界が新型コロナウイルスのパンデミックにのみ込まれたために開催されなかった。ゼレンスキーが2年をかけてプーチンと交渉しようとしたことは、ことごとく空振りに終わった。

「平和大統領」になりたかった

21年春、ウクライナ大統領からドンバスで会うことを提案されたクレムリンの主は次のように答えた。「われわれが関心があるのは、ロシア語と教会とウクライナのロシア連邦市民だ。ドンバスはウクライナ国家の内政問題だ」

その5カ月後、ロシアの前大統領で現在は安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフはロシアの経済紙コメルサントへの寄稿で、ウクライナの現指導部とのいかなる接触も意味がなく、ロシアはウクライナの政権交代を待つと述べた。そして4カ月後の今年2月24日、プーチンはウクライナに本格侵攻した。

それでもゼレンスキーには、まだプーチンと会談する用意がある。ただし今となっては、目と目を合わせて話をするためではなく、ロシアの侵攻を止めるためだろう。

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