最新記事

ウクライナ

ロシアの大規模ミサイル攻撃には、西側の防空システムも役に立たない?

Western Air Defense Systems Have Limited Effect on Putin's Mass Strikes

2022年10月11日(火)18時31分
キャサリン・ファン

爆風で破壊されたキーウ中心部のオフィスビル(10月10日) Vladyslav Musiienko-REUTERS

<ウクライナ全土に降り注ぐミサイル攻撃を前に、米独など西側諸国はウクライナに最新鋭防空システムの供与を急ぐが、効果は限られると専門家>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が10月10日、ウクライナ全土に放ったミサイル攻撃は、ウクライナの防空システムの弱点を露呈させた。ウクライナを支援する西側諸国は、より高度な軍事技術を届ける必要に迫られている。だが、たとえそうした支援が実現したとしても、ロシアの攻撃からウクライナを守る効果には限界がありそうだ。

ドイツ政府は10日、供与が決まっていた4つの防空システムのうちの1つを数日内に前倒しで提供すると発表した。同時に他の国々に対しても、「キーウをはじめとする多くの都市への新たなミサイル攻撃は、ウクライナに防空システムをいち早く提供することの必要性を浮き彫りにした」と呼びかけた。これは、ウクライナの国防相ならびに欧州委員会が最近になって指摘していた点でもある。

しかし、今回のロシアによる攻撃が広範囲にわたり、またエネルギー関連拠点を標的にしていることを考えると、西側支援の効果には限界があるかもしれない。

【動画】ウクライナに降り注ぐロシア報復のミサイル

冬を前にエネルギー設備を攻撃

ノースウェスタン大学の政治学部教授で学部長を務めるウィリアム・レノは本誌の取材に対して、「西側が提供する防空システムは、ウクライナにとって多少の助けにはなるが、戦術的な効果は限定されたものになるだろう」と述べた。

「ロシア側の声明によれば、この24時間に実施されたミサイル攻撃は、水道と電気のインフラを標的にしたものだった」とレノは述べる。「たとえミサイルがこれらの標的に命中するとしても、あるいはそれ以外の場所に着弾するとしても、(防空システムの)戦術的な効果は限定的なものだろう」

数十発のミサイル攻撃がおこなわれた10日の攻撃では、ウクライナの複数都市で、電力や水道の供給が断たれる事態となった。厳しいものになると予想される冬を前に、ロシアはウクライナのエネルギー施設を脅かしている。当局者によれば、少なくとも15の地域で、部分的に電気の供給が断たれたという。

ロシアが10日におこなった攻撃により、アメリカのバイデン政権に対しても、11月末にウクライナに供与する予定だった高性能地対空ミサイルNASAMSの引き渡しを早めるよう、圧力がかかる可能性が高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「今すぐ検討必要ない」、中国への2次関税

ワールド

トランプ氏「非常に生産的」、合意には至らず プーチ

ワールド

プーチン氏との会談は「10点満点」、トランプ大統領

ワールド

中国が台湾巡り行動するとは考えていない=トランプ米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 5
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中