最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ北東部で撤退の屈辱を受けたプーチン 巻き返しは可能か?

2022年9月14日(水)16時54分

■穀物輸出再開合意の破棄ないし縮小
プーチン氏は、国連とトルコの仲介で合意したウクライナの穀物輸出再開を巡り、ロシアと貧困国にとって公平さに欠ける内容だと不満を表明し続けている。

今週にはプーチン氏がこの合意の修正を議論するため、トルコのエルドアン大統領と会談する予定。プーチン氏が直ちにウクライナに打撃を与えたいと考えるなら、合意を停止もしくは破棄するか、11月の期限到来時に更新しないという選択肢がある。

西側諸国や中東・アフリカの貧困国はプーチン氏が世界的な食料不足を深刻化させたと非難するだろうが、プーチン氏はウクライナに責任を押しつけるとみられる。

■和平協定
ロシア大統領府は、適切な時期がくれば何らかの和平協定締結に向けた条件をウクライナに通知する意向だ。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、軍事力を駆使してロシアの制圧地を解放すると明言した。

ゼレンスキー氏が挙げる解放対象には、ロシアが2014年に強制編入したクリミア半島が含まれる。ロシア側は、クリミア問題は永久に解決済みと繰り返している。

ロシアは、ウクライナ東部の親ロシア勢力の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を国家として正式に承認しており、これらの地域をウクライナに譲り渡すことも政治的には不可能に見受けられる。

ロシアがウクライナ侵攻で最初に「大義名分」に掲げたのが、この2つの地域で迫害されている親ロシア住民を全面的に「解放する」ことだったからだ。

もちろんロシアは、部分的に制圧しているウクライナ南部の返還も国内世論に受け入れさせるのは難しい。南部ヘルソン州はクリミア北部と直接つながっている上に、クリミア半島に必要な水のほとんどを供給する要地。

また、ヘルソン州は、隣接するザポロジエ州とともにロシアがクリミア半島に物資を供給できる陸上回廊の役割も果たしている。

■核兵器使用
複数のロシア政府高官は、ロシアがウクライナで戦術核を使うのではないかという西側の見方を否定した。それでも西側には不安が残っている。

戦術核が投入された場合、大規模な被害が生じるだけでなく、事態がエスカレートして西側とロシアの直接戦争に発展しかねない。

ロシアの核ドクトリンは、ロシアが核兵器ないし他の種類の大量破壊兵器の先制攻撃を受けた場合、あるいは通常兵器によって国家の存亡につながる脅威がもたらされた場合、核兵器使用を認めている。

元駐ロシア英大使のブレントン氏は、プーチン氏が追い詰められ、面目を保てないほどの屈辱的敗北に直面したなら、核兵器を使う恐れがあると警告した。

ブレントン氏によると、ロシアが敗北、しかもひどい負け方をしてプーチン氏が失脚するか、それとも核兵器の威力を誇示してこうした事態を回避するかの選択を迫られるとすれば、プーチン政権が核兵器使用に踏み切らないと断言できないという。

米国の駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏も、そのリスクはあると認めつつ、実際に核兵器が使われる確率は乏しいとの見方も示した。「使っても実際に戦場で優位に立てるわけではなく、米国が座視して何の対応もしないのは不可能なので、プーチン氏ないし彼の側近が自滅的行動に走るとは思わない」という。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジャーナリストの投獄、世界で330人と依然高水準 

ワールド

デンマーク外相、トランプ氏の武力不行使発言を評価 

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、25年12月は9.3%低下 

ワールド

FRB議長候補は「就任すると変わる」、トランプ氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 10
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 9
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中