最新記事

ヘルス

睡眠補助サプリで、子供の「中毒」事故が急増中──気を付けるべきことは?

Taking Too Much Melatonin

2022年7月7日(木)17時31分
エマ・ウォーレンブロック

他の国では規制の対象であり、しかも以上のような影響があるのに、なぜアメリカのメーカーは高用量で販売するのか。おそらくメラトニンの大量摂取は即効性があるからだ。5ミリグラムも飲めば、本物の睡眠薬や抗ヒスタミン剤と同様にすぐ眠くなる(本来、眠るために抗ヒスタミン剤を服用すべきではない)。

それに睡眠導入剤のアンビエン(ゾルピデム)を医師に処方してもらうより、ドラッグストアでメラトニンを買うほうがずっと簡単だ。メラトニンを飲むと二日酔いのような症状や悪夢に悩まされるといったよく聞く苦情は、実は過剰摂取の副作用なのだ。

ラベル表示に偽りがある場合も

アメリカではサプリ扱いで、米食品医薬品局(FDA)の規制対象薬ではないため、メーカーは高用量のメラトニンを販売できる。さらにラベル表示が虚偽の可能性もある。

全米睡眠医学学会の研究者が17年に臨床睡眠医学ジャーナルで発表した論文によると、30種類以上のサプリのメラトニン含有量を調べた結果、ラベル表示より83%少ないものから478%多いものまで、70%以上の製剤でばらつきがあった。5ミリグラムのメラトニンを摂取しているつもりが、実際には30ミリグラム近く摂取している可能性がある。

一般にメラトニンは少量を短期間摂取するだけなら、全く問題ないとされている。だが長期的な使用については、十分な研究がまだない。ホルモンの一種なので、専門家は思春期におけるホルモンの発達に影響を与える可能性があると懸念する。

子供の睡眠トラブルにメラトニンの短期使用を検討することを推奨する専門家は多くいるが、使用前に小児科医に確認すべきだ(成人でもメラトニンの服用自体、事前に医師に相談したほうがいい)。

アメリカでは19年の段階で17人に1人の子供が週に1回以上メラトニンを服用している。CDCの調査開始時点では、魚油のサプリに次いで「アメリカで子供が最もよく使用する天然由来の製剤」だった。CDCの報告書が示唆するように、消費者がメラトニンを今後もどんどん買い続ければ、この数字もさらに増える可能性が高い。

では、親が自分の睡眠トラブルとのバランスを取りながら、子供たちの安全を守るにはどうしたらいいか。まず、自分(または子供)にメラトニンが必要かどうかを考えよう。深刻な不眠の多くは、生活習慣の見直しと睡眠環境の改善で治療可能だ。

もしメラトニンが手放せないのであれば、用量の少ない製剤を買う。必要な摂取量はあなたが思うほど多くないかもしれない。幼い子供がいる場合は、お菓子と混同しにくいものを選ぼう。かんで服用できるチュアブル錠やグミ、チンキ剤などではなく、しっかり飲み込まなければならない錠剤を選ぶのもポイントだ。

最後に、メラトニンは棚の一番上に保管するか、子供が手を出せない鍵のかかるキャビネットに保管するのがベストだ。つまり、FDAがやらないこと──薬品として扱うことが重要なのだ。

©2022 The Slate Group

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が軍事パレード、新型ICBM公開 金氏は海外

ワールド

トランプ氏、心臓年齢は実年齢マイナス14歳 健康状

ワールド

米政府、大規模な人員削減開始 政府機関閉鎖10日目

ワールド

米、11月から中国に100%の追加関税 トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 5
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 6
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 9
    【クイズ】ノーベル賞を「最年少で」受賞したのは誰?
  • 10
    森でクマに襲われた60歳男性が死亡...現場映像に戦慄…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 7
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 8
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中